とある学校（〜18歳）の冬の授業風景──。

「かつて、人類は病を患い、長い暗黒時代を過ごし続けました。
　パイ取り合戦、フルーツ争奪合戦、不満足、不知足、相互破壊、相互絶滅…これらの病、Against Life 病に、人類が翻弄され続けた時代を何と呼びますか？」
「“人類の進化の傷あと時代”と呼びます」
「そうですね。この時代に、人類は、さんざん、不幸を経験し、不幸をまき散らし合い、不幸を互いに強要し合い続けました。
　そう。人類は、何百年何千年もの長い間、まさに病を患っていたのです。

　しかし、人類は、病を治し、どうにか健やかに再生できました」
「誰のおかげでしたか？」
「当時の、みんな一人一人のおかげです」
「当時の、みんな一人一人の何のおかげでしたか？」
「当時の、みんな一人一人の気づきのおかげです」
「当時の、みんな一人一人の、何の気づきのおかげでしたか？」
「常識ですよ。Against Life 病が蔓延していること、健全さを取り戻すためには、最終的に、For All Life 路線こそをとり続けることが大事であることの気づきのおかげです」
「その通りですね。ココエが活躍していた頃から、あらゆる分野、あらゆる場面において、Against Life 病が蔓延していることに気づいたおかげです。
　それは、人間社会におけるあらゆる苦難、害悪、罪悪の本質が、“自分らさえよければいい、他者が犠牲になるのはよい”的な発想に基づくAgainst Life 病であることに気づいたおかげであり、同時に、人間社会におけるあらゆる幸福、善益、功徳の本質が、“自分らだけでなく、みんなも喜ぶことこそがよい”的な発想に基づくFor All Life 路線であることに気づいたおかげでもあります。
　それは、この地球上であらゆる人間社会どうしが争い合い続けることが、個体の中であらゆる細胞社会どうしが争い合い続けるほどに、愚かで不健康であることに気づいたおかげでもあります。
　つまり、一人一人が、Against Life 病が、あらゆる不健全さ──邪悪さ、醜さ、不毛さ、不調和、不快さ、不信、憎しみ…の根源であることに心の底から気づき、その上で、一人一人が、あらゆる健やかさ──善良さ、美しさ、豊かな実り、調和、心地よさ、信頼、感謝…の根源である For All Life 路線をとるように心の底から転換することが、みんなに広まり続けたからこそ、人類全体も気づき、再生できたのです。
　この時代のことは、ふつう、何時代と呼ばれていますか？」
「ルネサンクス時代と呼ばれています」
「そうですね」
「先生、ルネサンス時代ではなく、ルネサンクス時代と呼ばれているのは、なぜですか？」
「わかりません。
　いずれにせよ、このルネサンクス時代に、一人一人の気づきのおかげで、それまで人類の中で、ひどく流行っていたAgainst Life 病が少しずつ克服され、For All Life 路線の健康な状態への再生が少しずつ広まり続けたのです」
「どうして、ルネサンクス時代に、それが起こったのですか？」
「さまざまな要因が考えられています。
　その中で、特に、ココエのりんごの実証実験を通じた気づき、および、その気づきをきっかけとした、心の底からの再生──ビクビク、クヨクヨ、モンモン、ヘトヘト、ピリピリ…から、ニコニコ、イキイキ、ワクワク、ウキウキ、ホワホワ…への心の再生──が広まり続けたことが大きかったと言われています。
　さらには、ココエの示した再生可能心エネルギーの考えも、大きな影響をおよぼしたとも言われています。
　ですので、ルネサンクス時代は、“心再生”時代、あるいは、ときに“心笑再生”時代とも呼ばれています。
　──ココエは、次のような言葉を残しました。
“電荷エネルギーや磁極エネルギーがくめども尽きない究極の再生可能エネルギーであるとするならば、心のエネルギーは、くめどもくめども尽きない超究極の再生可能エネルギーである──”
　彼は、何度も何度も絶望を乗り越え続けながら、健やかな自己フルーツ化──“自己実現 For All Life”を果たしました。
　彼は、すてきな“フルーツ For All Life”を生み出しました。
　私たちも彼を多いに見習いましょう」
「ハーイ♪」
「そこで、最後の課題です。
　みなさんは、どのような健やかな自己フルーツ化──どのような“自己実現 For All Life”を果たしたいでしょうか？
　君らは、どんな“フルーツFor All Life”を生み出したいですか？

　提出義務は、ありません。
　提出期限も、ありません。
　高校を卒業してから、提出してもかまいません。
　大学を卒業してから、提出してもかまいません。
　就職してから、提出してもかまいません。
　結婚してから、提出してもかまいません。
　社会人を引退してから、提出してもかまいません。
　…
　ゆっくり、自分自身を見つめながらまとめてみてくださいね。
　もし提出したくなったら、いつでも提出しにいらっしゃい。
　教師たちは、代々、受付を引き継いでおきますから──。
　今日は、この学校生活、最後の歴史の授業ですね。
　少し、早いですが、みなさん、ご卒業、おめでとう。
　みなさんの活躍を楽しみにしています」