目を覚ますと、外は、薄暗い状態だった。
　──夕方？　それとも朝？
　時計を見ると、夕暮れどきであるとわかった。
　起き上がってみると、そこに、さわやかな気持ちになっている自分、ヘトヘト感がなく、やる気を持って新たに勉強に取り組めそうな自分がいることに気づいた。
　──これが、“本来の自分”ってやつ？

　それから、とりあえず、『Off　On』を書き入れてみた。

　──こんな感じ？

　そして──
「オンと…」　そう口にしたとたん、

　フワリン！
　ペーパー・コンパスが机を離れ、空中に浮き上がったんだ。
「ワッ！？」
　コンパスの針の絵が浮かび上がり、クルクルと勢いよく回っている──。
「キャハハーイ♪ 　ありがとーう♪
　これでやっと、思うままに──自由自在に空中遊泳できるようになったわ。キャハーン♪　気持ちいい♡♪」
　フワリフワリ──
「ちょっと待って、ちょっと待って、──ええ！？」
　目を丸くしながら、気持ちよさそうに空中遊泳しているコンパリーチェを眺めた。
　夢だ。夢にちがいない！　前にも似たような夢を見たよ。デジャブ夢だ。…
「キャハハ♪　それに、よりいっそう自由自在にしゃべることもできるし──　それから、自由自在に大きさを変えることもできるよーん♪」　コンパリーチェは、グーンと大きくなってみせた。　「キャホン♪　わたしの上に乗ってもいいよ〜♪」
「あ！？　や、やめとくよ」　あわてて断った。
　あぶねえ。デジャブ悪夢だ。…

　それから、僕は、試しに口にしてみた。
「オフ？」
　すると、コンパリーチェは元の大きさに戻り、そのまま机の上に舞い降りた。コンパスの針の絵も静止した。

　──電化製品とかのスイッチ・オン、スイッチ・オフと同じ？

　それにしても、いったい、どこまでが現実？　どこからが夢？