夏休み最終日──
　キラキラし始めている海辺の砂浜に、ふたりで腰を下ろしていた。図書館からの帰りに特別に寄り道したのだ。遠くに並ぶ２台の自転車──。

　彼女が歌い出した。

「白い雲　シュークリーム　アイスクリーム♪
　ドーナツ　ワッフル　ホットケーキ♪
　青い空に　プカリプカリと　浮かんでいる♪

　鳥が羽ばたいて　カメが泳いで　ウサギがビョンビョン跳ねて♪
　リスが穴ほって　ゾウが水浴びして　メダカが学校いって♪
　チョウチョウがダンスして　花が咲いている♪

　いちご　もも　すいか　メロン　ぶどう　りんご　パイナップル♪
　みかん　かき　バナナ　なし　キウイ　さくらんぼ♪
　豊かな大地に　たっぷり実っている♪

　サンサン太陽がキスして　地球が頬を染めている♪
　イルカがジャンプしている　子犬がしっぽふっている♪
　みんなが笑っている♪

　あい・フィール・ハッピー♪
　そー・ゆー・フィール・ハッピー♪
　そー・うぃー・フィール・ハッピー♪
　ピピピーピピー♪

　ゆー・フィール・ハッピー♪
　そー・あい・フィール・ハッピー♪
　そー・うぃー・フィール・ハッピー♪
　ピピピーピピー♪

　タララ　ラーラーラー♪
　…

　作詞作曲、初果 ひるね──」
　パチパチパチ…　僕は拍手しながら「ブラボー♪」と言った。
　彼女は照れながら「ご清聴、ありがとうございました」と言った。
「──ところで、“ピピピーピピー♪”って、何のこと？」
「“ピピピーピピー♪”には、実は深い深い意味があるのです」
「──」
「──なんてことは、ございません。
　ただ、ハッピーの“ピー”を並べてつなげただけ？」
「──え？」
「アハッ！　だって、これしか、このメロディーに合わせようがなかったんだもん。アハハッ♪」
「ブッハッハッハッ…！」　こらえていた僕も、ついに吹き出した。
「ただ、この歌は──
　今の私にとって心地よくて、今の私の中で最も好きになれる“メロディーや言葉”からできているのよ」
「──うん。自分で考えて生み出したんだね」
「──もちろん、最初に頭の中にイメージを作って、次にそのイメージをベースにメロディーや言葉を育んでいた意味では、考えながら生み出していたわ。　──ただ、私の場合、やっぱり“自分で感じながら生み出した”の方が、より正確かも。“好きだなあ。心地いいなあ”を追求する感じで？」
「ああ」　心の中で『カラダ　アタマ』を意識していた。