「ねぇ、電話し合おうよ。これからも、ずっと──。
　そしたら、私が大学生らしくなったところを、いっぱい披露できるわよね♪
　そこから、たくさん刺激を受けてね♪　それで、やる気が、うんと高まって、勉強がサクサクはかどったりして。アハッ♪」
「──」
「それで──　そうやって、来年、受かればいいじゃない？　 そうなれば、また一緒になれるよ」
「──」
「１年なんて、あっという間よ。 ──大丈夫。余裕よ」　そう言って、彼女は優しく心笑んだ。
　彼女は、こんな情けない僕のために、無理して明るく振るまい、精一杯、元気づけようとしてくれているのだと思った。　
　彼女の気持ちが、心遣いが、ものすごくありがたかった。
　彼女の気持ちを察すれば──
　たとえ“今すぐ大学進学をあきらめる”という選択肢がありえても、そんなことは、とても口に出せないと思った。
「──ありがとう。これからどうすべきか、どうしたらいいか…ゆっくり考えてみるよ」と僕。
「──ええ、そうね」
「それに、ここまで、こうやって来てくれて──　本当に、ありがとう」　感謝の気持ちでいっぱいだった。
「ううん」　彼女は、はにかみながら小さく首を横に振った。
「バブバブバブゥ♪　どういたしましてでちゅう〜♪」　僕は、赤ちゃんと平行に並んで見上げる体勢になって、赤ちゃんのような両腕の身振りを交えて、あたかも赤ちゃんのセリフであるかのように言ってみた。
「フフフッ♪」　彼女は笑ってくれた。