高校を卒業して間もない雪解けの季節──　コンパリーチェとの別れの日を迎えた。

　赤ちゃんペーパー・コンパスは、まだ産まれていなかった。
　──どうやら、“間に合わなかった”らしいや。
　それは、ちょうど、２階の自分の部屋で家の留守番をしていたときのことだった。
「大学は落ちたんだよ」　コンパリーチェには、それまで報告していなかった。
「ええ！？」　コンパリーチェは、しばしプルプルと震え──　それから、 「ああ、わたしのせいだ」と言った。
「バーカ、そんなわけないじゃん。これは自分自身のせいだよ。“自分に、もっと実力があればよかった”ってことなんだ。
　──まあ、人生長くやっていれば、いろいろあるさぁ。
　アッハッハッ！」　──やっぱり、おじいちゃんに似てきた？
「ズズー、ズ、ズ…　ヒィック、ズズー…」
「感謝しているよ。おかげで、この３年間、すっげえ楽しかったし──　幸せだった。
　こんなに彼女と仲良くなれたのも、こんなに勉強がはかどって成績が伸びたのも…どれも君のおかげでもあるんだよ。
　──ありがとう」
「グスン、グスン、ズズー、ズ…　きっと、すてきなフレーム・マスターになれるよ。ズズーズ、ズズー　ヒィック、ズズー…　 夢が実現するように、応援しているからね。
　間に合えば──」
「──間に合えば？」　間に合わなかったんじゃんなかったの？
「あ、ううん、いいの」