水平線を眺めて立っているふたり──。

「よかった。ふたりとも合格して──」　彼女が、しみじみと言った。
「ああ」
「──コツコツ取り組み続けてよかったね。勉強──」
「──ああ」　喜びがじわじわと湧き上がるのを感じながら、かみしめるように言った。

　なぜだか急に、海に向かって大声で叫びたくなった。
「ワァァァー！！」
　すると──
「ワァァァー！！」
　彼女も、海に向かって大声で叫んだ。

　ふたりして、心笑み合った。

　それから──
　 僕は、海に向かって、力いっぱい叫んだんだ。
「大好きだぁー！！」
　すると──
「大好きぃー！！」
　彼女も、力いっぱい叫んだ。

　さらに、ふたりして、心笑み合った。

　例えば、目と目が合うこと。
　例えば、鼓動が高鳴ること。
　例えば、ふたりがキスすること。
　例えば、ふたりが一緒であること。
　例えば、合格が、ふたりともであること。
　例えば、力いっぱいの叫びであること。
　例えば、ふたりが両想いであること。
　例えば、ふたりが、心笑み合うこと。
　…

　これらが、どれも『On』の方向にあることに気づいたのは、それから、しばらく経ってからだった。
　それが、おじいさんの“粋な心遣い”であったことに気づいたのも、それから、しばらく経ってからだった。

　ふたりとも、空と海と水平線の方を眺め続けていた。
　両想いであることの喜びをかみしめながら──
　相手の存在を、強く強く意識しながら──