そのキラリに近づくにつれ、少しずつスピードを緩めた。
　そばに立ち止まってキラリを見ると、それは、丸い石だった。
　さっそく、その石に手を伸ばそうとしたとき、自分の目を疑った。
　──え！？
　なんと、そこには人が横たわっていたのだ。
　な、なんで、こんなところに人が！？

　見るからに日焼けしている見ず知らずのおじいさんが、つばの広い帽子を、深くかぶりながら横になっている──。
　このとき、この丸い石のことを気にかける以前に、コワい疑問が心に浮かんだんだ。
　生きているのか！？　それとも …

　よく観察すると、おじいさんのお腹が、ゆったりと上下しているのがわかった。

　とっさに頭の中で考えた。
　 ──うん。“さわらぬ神に、たたりなし”だ。
　さっさと、この場から立ち去ろう。
　 ──行くよ、ランプベリー。

　ランプベリーの方へ振り向いた僕は、目を大きく見開いた。
　ギョ！？
　ランプベリーが、おじいさんの顔をペロペロとなめていたのだ。帽子をずり動かしながら──
　こらぁ！　ダメだ！
　心の中で叫びながら、ひもを引っぱった。ランプベリーも負けじとばかりに、ふんばった。お互い譲り合わずにいると──
　ムクッと、そのおじいさんが動き始めた。

　！！！　　──言葉にならなかった。
　ドキドキドキ …
　おじいさんは、ゆっくり上半身を起こし、帽子をかぶり直した。
　かと思うと、口を開いた。
「何しておる？」
　ドキドキドキ …
「あ、ハイ。ぼ、僕は──　た、たか、た、退屈だったから？
　──ラ、ランプベリーの散歩？」　ドキドキドキ …
　とっさに“宝の地図”のことは、秘密にした。
「ほう、そうか」
「ところで、その丸い石は、何ですか？」　思いきって尋ねてみた。
「こいつは、わしにとっての大切な宝物じゃ」
「きっと、何か、すごい秘密が隠されているのですね？」
「秘密？　そんなふうには、考えたことなかったなあ。
　ただの石、なんの変哲もない１つの石ころ、a ston、Ein Steinじゃと思っておった」
「──」
「ただ──　わしの大好きな人からのプレゼントじゃったから、大切にしておる。お守りのような存在でもある」
「──どうして、ここに置いているのですか？」
「もし、わしに、もしものことがあったとき、この丸い石が近くにあれば──　今度は、この石に気づいてくれた誰かが、この石を大事にしてくれるじゃろうと思ったからじゃ」
「──」　・・・