「これが、その宝の地図だよ」　僕は、それをおじいさんに見せた。
「お！？」　おじいさんは、そのとき明らかに驚きの声を上げた。
「──」
「──おまえさん、これ、どうしたんじゃ？」
「近くの海の砂浜で拾ったんです。ビンの中に折りたたんで入っていて──」
「ほう、そうか──」
　おじいさんは、そう言いながら地図を受け取ると──　何も話さず、しばらく地図をじっと眺めた。

　そうして、おじいさんは、僕に地図を返すと、おもむろに口を開いたんだっけ──。
「少年よ──」
「ん？」
「フレーム・フォー・ライフを知っておるじゃろうか？」
「──フレーム…」
「フレーム・フォー・ライフ──　フレー！　フレー！　フレーム、あるいは、ワクワク枠とも呼ばれておる」
「ううん、知らないよ。 ──それは、いったい何なの？」
「フレーム・フォー・オール・ライフは、すべてのライフのためになるフレームじゃ。この中のライフには、人生はもちろん、生活、生命、いのち、生きること…　も含まれる」
「すべてのライフって、生まれてから死ぬまでの、だれかの一生のこと？」
「その意味もあるが、みんなのライフの意味もある。おまえさんらやわしを含むみんなのライフ──。
　じゃから、このフレームは、少なくとも、今地球上のすべてのライフのためにもなる」
「──」
「──このフレーム・フォー・オール・ライフが具体的に何なのか、聞いてみたいと思わないかい？」
　・・・　──ニッコリ心笑むおじいさん。
　上に向けた親指を前後に動かしながら、頭を少し傾けている、おじいさんのやわらかな笑み。

　──結局、僕は、おじいさんを走って追いかけることにした。

　歩みを止めて、向きを変えるおじいさんに、僕は言った。
「──。 あの、やっぱり、聞いてみたいです。ハァ、ハァ…」
「──ん？　なぜ？」
「──。 ──な、何となく？　ハァ、ハァ…」
「──うむ、よかろう。 ──では、もう一度、その地図を貸してくれるかい？」
「あ、ハイ」　僕は、息を整えながら地図を差し出した。
　おじいさんは、受け取った地図をゆっくりと裏返した。
　裏は、何も書かれていない白紙だった。
「では、行くぞ？」
「え？　──さ、さあ来い」