自分の部屋の椅子の背もたれに体重をかけながら、窓の外を眺めていた。
　　For は、“〜のために”という意味で、
　　Against は、“〜に逆らって”という意味だっけ──
　念のため、英和辞典を引いてみた。すると、『For　Against』のペアには、“賛成　反対”の意味もあるとわかった。
　　──ふーん。

　その後、例によって、それを書き込んだ。
「フォーと──　アゲンスト。 ──こんな感じ？」

　さっそく、それを手に持って話しかけてみた。「こんにちは」
「キャッー！　えっちぃ！」　コンパリーチェの第一声。
「ええ！？」
「──あっ！　ゴメンなさい！
　──キャハハ♪　お久しぶりでーす♪　こんにちは」
「こ、こんにちは。あれ、大丈夫？　あれ、なんなら出直そうか？」
「キャハ♪　大丈夫よ。 ──それより、何か話があったんじゃない？」
「あ、あれ、やっぱり『For　Against』の意味ってさあ──」
「つまんなーい！　せっかく、久々なのに──」
「って言っても──」
「それより、今、あなたが好きな女の子、どんな子か教えて、教えて♪」
「は？　──なんだ？　いきなり──。
　それより、今の僕は──　将来の、はっきりとした目標を見つけたくて──　見つけたくて──　見つけたくて── …」
　　あんなことがあっても、いつも変わらず、あいさつし続け
　てくれる優しさ──
　　女の子らしい何気ないしぐさ──
　　ふと、こぼれる、かわいらしい笑み──
　　 …
「うーん、カワイイ子ね？」
「あわっ！？　見るな！」
「キャハ！　しっかり見ちゃったもーん♪　青春ね？　キャハ♡」
「──。この子は、ただ──」
「ただ好きなのね。キャハハ♡♪　赤くなっているし──　カワイイ♡」
「──」　　・・・
「私も、今、好きなコンパスいるんだぁ。
　──キャハ♡　人間の世界では、“好きな人がいる”とかって言うんでしょ？」
「──。 まあ──」
「わたし、その彼のことが、とっても大好きなの。彼のためにできることなら、何でもしてあげたいな♪
　──キャハ♡　“すぐにでも結婚できたらいいな♪”と思っているわ」
「──。 ──で、できるといいね」
て「キャハハ！　ありがとーう♪」

　　ペーパー・コンパスたちは、みんな結婚願望が強いの
　だろうか？