しかし、その後の現実は、あのときの海のように過酷だった。

　専門家やマスメディアの方々からのすさまじい反発が始まった。
　エネルギーの消滅の簡単な実証──“ココエのりんご”という根拠を完全に無視した“根拠のない誤科学”という誤レッテルが一方的に張られ、ケチョンケチョンに執拗にけなされ続けた。
　さらには、成果と全く関係ない人格攻撃もなされ始めた。
　恥ずかしがりやなのに“目立ちたがり屋の自己顕示欲の塊だ”と一方的に誤レッテルを貼られ始め──　損失や犠牲を覚悟して大まじめにやっていたのに関わらず“素人が調子に乗ってふざけすぎている”と一方的に誤レッテルを貼られ始め──　健全な全人類レベルのライフを誕生させるために、健やかな天体生態系社会レベルのライフの一員化を助けるために、自然治癒力を引き出すべく健やかな心を再生させようとする全人類レベルのライフの医者であろうとしていたのに関わらず、“落ちこほれ医者だ”と一方的に誤レッテル、──いや、正しいレッテルが貼られ始めた。
　確かに最後のレッテルは正しいけれど── ・・・。
　いずれにしても、一般の方々は、専門家やマスメディアが伝える正しいレッテルだけでなく誤りのレッテルまでも、よく確かめようとしないままに鵜呑みにし、“流され”始めた。
　そのような変化が積み重なり続けた結果、少なくともS.ITSUMO COCOEは、社会的に完全に抹殺された。
　この世では、Against Life 病の症状── 今の自分の保身だけで精一杯のヘトヘト症状、裸の王様を“裸だ”と指摘できないビクビク症状が、広く強固に蔓延し続けていること──。
　多くの人が、Against Life 病を、知らず知らずに発症し続け、知らず知らずに互いに悪化させ合い続けているということ──。
　こんな僕なんかに、全人類レベルのライフの病を治すことなど、どだい無理な話だったんだよ──。
　もう、どうしようもないことだったんだよ──。
　もう手遅れだったんだよ。
　──潔くあきらめよう。 その方が、よっぽど楽だよ。
　…
　それにしても、つまらない世の中だよ。
　なんて、つまらない世の中なんだろう。
　…
　心笑君、ゴメンよ。ダメだったよ。甘かったよ。
　どうせ、自分には、無理だったんだよ。
　落ちこぼれ医者は、しょせん、どこまでいっても落ちこぼれ医者なんだよ。
　…