とある学校（〜15歳）の秋の授業風景──。

「みんなも知っているように──　かつて、エネルギーは永久不滅であり、生成も消滅もしないと心底信じていた人が大多数だった時代が300年以上も続いたんだ。当時、最も有名で偉大だった物理学者の一人、アインシュタインまでも心底信じきっていたほどだった。
　このエネルギーの永久不滅の原理を土台にする例外のないエネルギー保存則は、当時の最新最高の科学の１つ、一般相対性理論を育む支えになったことを含め、ある程度は確かに役立っていた。
　しかし、そのせいで、物理学の進歩は停滞し、人類は、究極の再生可能エネルギーの十分な健やかな利用から長らく遠ざかり続けることになった──」
「300年も、例外のないエネルギー保存則を信じていた人々が、ほとんどだった時代があるなんて信じられないよ」 「例外のないエネルギー保存則のせいで、究極の再生可能エネルギーの十分な健やかな利用から長らく遠ざかっていたなんて、当時の人々は、なんて愚かだったんだろう」
「こらこら、決して愚かなんて言ってはいけないよ。彼らは、一生懸命、全力で、心底、そう思いこみ続けていたのだから。
　──みんなは、どうして、こうなったと思うだろうか？」
「人は流されやすいからよ」　「自分を守るために同調するからさ」
「不安だったからだわ」　「疲れていたからよ」　「何となくさ」 「地球中心が好きだったように、永久不滅が好きだったからよ」 …
「そうだね。どれも原因として考えられる」
「先生は、どう思っておられるのですか？」
「先生は、思うんだ。結局は、多くの人が、心の自由を持っていなかったからじゃないかって──。
　もし、多くの人が心の自由を持っていて、自由に感じて、自由に考える習慣を持っていたら、決して、こうはなり続けなかっただろうって──」
「──」
「今は、りんご、卵、皿、ボール、楽器…をそうっと下ろす過程、たったこれだけの簡単な過程によって、エネルギーの消滅が実証されていることに、誰でも気づくことができる」
「ココエのりんご──。誰でも、どこでも簡単に実証できる、わかりきった常識です」　生徒の一人のつぶやき。
「ところが、かつての人々にとっては、その常識が、逆に、とんでもない、ばかげた非常識だった。先生が注目してほしいのは、人類が、その今の常識に気づくまでの300年もの間、何十億何百億人もの人々が、物をそうっと下ろす過程を体験していたことだよ」
「──」
「目の前でエネルギー消滅の実証実験が何億回も何兆回も繰り返されていたのに、そのことに誰も気づけなかったのは、なぜだったのだろうかと、ここで改めて考えてみてほしいんだ。
　いや、もしかしたら、誰かは、とっくに気づいていたのかもしれない。でも、とっくに気づいていた誰かも、なぜ、そのことについて深く考えようとしなかったのだろうか？　あるいは、その考えを公表しようとしなかったのは、なぜだったのか？　そんなふうに考えてみてほしいんだ」
「──先生は、心の自由を持っていなかったからだとお考えなのですね？」
「そうだね。先生は、誰もが身につけていた当時の古い常識が、結局、心の自由を奪い続けていたからじゃないかと思っている。
　より具体的には、例外のないエネルギー保存則という古い常識にしばられていた者が、新しい常識の芽に“非常識なナンセンス”とレッテルを貼って排除していた時代であったがゆえに、不安が植えつけられ、人々の自由な感情のあり方、自由な思考のあり方が奪われ続けたからだと思っている。
　それは、まるで、裸の王様を目の前にしているのに、みんなで口をそろえて、“見事な服を着ている”と言い張り続けていたような時代であり続けていたからとも言えるだろう。
　そのような時代が、300年以上もの間、続いていたんだ──」
「信じられないわ」　「信じられないよ、先生」
「信じられなくても、事実だよ。エネルギーの永久不滅を300年以上もの間、人類は、みんなして肯定し続けていたんだ。
　その間、誰も、裸の王様が裸だとは言えなかったんだ。
　当時の、最も優秀で、最も疑り深かった物理学者の一人アインシュタインでさえも、死ぬまで裸だと言えなかったくらいに──」
「先生、地球の周りを太陽が回っていたと信じられていた時代に起きていたことと似ていますね？」
「そうだね。似ているね。天動説が信じられていたのは、2000年もの間だったけれど──」
「2000年！」
「この場合、人類は、2000年もの間、裸の王様が裸である事実を認められなかったことになる──」
「──」
「あらゆる常識は、誰も疑問を投げかけないからこそ常識であり続ける。だから、あらゆる常識は、周りに流されて思考停止したまま何となく鵜呑みにし続けているおかげで保たれている幻想にすぎない可能性を秘めているんだ。“裸の王様は美しい服を着ている”と同等な幻想にすぎない可能性を──。
　一方で、思考停止したまま常識を守り続けることは、同時に自身の不安を減らすことにもつながっている。思考停止したまま “裸の王様は、裸だ！”と指摘せずに“裸の王様は美しい服を着ている”と思い込み続けることが自身の不安を減らしていたはずであるように。
　だから、何かの常識を守り続ける者は、自身の不安を減らし続けたいからこそ、たとえ幻想であっても、この常識に疑問を抱く者を反射的に排除してしまう。
　ただ、そのせいで──
　ブルーノは、火あぶりにあってしまった。
　ガリレオは、死ぬまで自由を奪われ続けた。
　そして、ココエは、失職してストレスで早々と死んでしまった」
「かわいそう」
「そうだね。君たちは、ココエのりんごについてだけでなく、“ココエの苦難”についても、よく知っていると思う。
　──確かに、ココエは、かわいそうだったけれど、ココエのりんごを含むココエの成果がきっかけとなって、人類は、例外のないエネルギー保存則という古い常識、幻想的な常識を覆すことができた。
　最初の頃、気づいた人は、ごく少数だけだった。
　それでも、少しずつ少しずつ増え続けたんだ。
　研究ポストについていない無給のボランティア科学者も、研究ポストについている有給の科学者も、ともに気づき始めた。
　中には、リスクをかえりみず、支持を表明する者も現れた。
　中には、“エネルギーの永久不滅性の考えや例外のないエネルギー保存則の考えに基づいて、エネルギー消滅やエネルギー生成を完全否定すること”のナンセンスさに気づいた人もいた。
　それもこれも、多くの人がウワサをよく確かめるべく、自由に感じながら、自由に考えながら、それぞれのやり方で再発見し、“ココエ体験”を満喫したおかげだった。
　それぞれが、直視した自然についての現実を勇気を振りしぼって公表してくれたおかげで、真実への気づきが広まり続けた。
　数人が気づき、数十人が気づき、数百人が気づき、数千人が気づき、数万人が気づき…そんなふうにして真実への気づきが指数関数的に広まり続け、いつしか、エネルギーの非永久不滅性、エネルギー保存則の例外は、人類にとっての新しい常識となった。
　1000年以上かけて「地球中心、天動説」の呪縛が解かれたように──　300年以上かけて、ついに「永久不滅のエネルギー、例外のないエネルギー保存則」の呪縛も解かれたんだ。
　その結果、全人類は、ついに、究極の再生可能エネルギーの十分な活用に、健やかに取り組めるようになった。
　おかげで、全人類は、さらなる飛躍を遂げることができた。
　地球環境や地球生態系、全人類の営みを支えるためのエネルギー源として、環境に優しい究極の再生可能エネルギーを上手に活用しながら、全人類は、ますます住み良くなった地球上で、ますますハッピーさを増やし続けた。
　エネルギー不足問題もなくなった。
　食糧不足問題もなくなった。水不足問題もなくなった。
　多様な気候帯間の自然の恵みの格差もなくなった。
　紛争問題もなくなった。
　気候変動を自在にコントロールできるようにもなった。
　過剰な温暖化や寒冷化の予防も可能になった。
　天体の地球落下の予防も、より簡単に可能になった。
　これらのことは、健やかに地球上で暮らしていくことだけでなく、健やかに別の天体へ進出することも助けた。
　誰もが心豊かになった。自由時間が増えた。余暇が増えた。
　誰もが自分の才能をイキイキと開花させる、健やかな自己実現社会が到来した。
　楽しみが増えた。喜びが増えた。安らぎが増えた。
　健康が増えた。笑顔が増えた。心笑が増えた。
　ニコニコが増えた。イキイキが増えた。ワクワクが増えた。ウキウキが増えた。ホワホワが増えた。ピンピンが増えた。ユウユウが増えた。
　…
　そして、現在がある。
　それもこれも、みんな一人一人が、心の自由を取り戻し、自由に感じ、自由に考え始め、ただ何となく鵜呑みにして受け入れていた常識の真偽をよく確かめ続けたおかげだった。ココエのりんごが、いいきっかけの１つになりながら──。
　それは、同時に、みんな一人一人の心の再生、復興、全快…のおかげ、一人一人の、クヨクヨ、ビクビク、オドオド、ウツウツ、モンモン、ヘトヘト、ムカムカ、イライラ、ピリピリ…から、ニコニコ、イキイキ、ワクワク、ウキウキ、スイスイ、ヒョウヒョウ、ホワホワ、アイアイ、ルンルン、ピンピン、ユウユウ…への主体的な方向転換のおかげでもあった。
　また、それは、同時に、Against Life 路線が病んでおり、For All Life 路線こそが健やかであることの気づきのおかげでもあった。
　また、それは、同時に、人間レベルのライフの病の自然治癒のおかげでもあったと同時に、人間社会レベルのライフの病の自然治癒、全人類レベルのライフの病の自然治癒のおかげでもあった」
「誰か、お医者さんが治したのではないのですか？」
「ノー。それは違うよ。あくまで自然治癒したんだ。私たちの中には、もともと、多大な自然治癒力が備わっていたんだ。
　その自然治癒力の根幹が、再生可能心エネルギーなんだ。
　再生可能心エネルギーという言葉を最初に使い始めたのは、まさに、究極の再生可能エネルギーという言葉を最初に使い始めたココエ自身だった。
　ココエは、この再生可能心エネルギーのおかげで、心の自由を得ることができ、数々の絶望を乗り越えながら、すばらしい業績を残すことができた。
　つまり、人類を飛躍させる究極の再生可能エネルギーの十分な健やかな利用をもたらしてくれた大元は──　心の自由を生んだ再生可能心エネルギーでもあったんだ」
「おもしろい♪」
「そうだね。おもしろいね。
　だから、みんなは、頭だけでもなく、体だけでもなく、ぜひ、心も大事にし続けてほしい。ココエのように──」
「ハーイ♪」