「──ちっとも、しょうがなくないよ」と僕。
「え？」と彼女。
「途中に自転車屋さん、あるじゃん。 ──そこまで君を乗せていくから」
「え？　でも──　え？　私の自転車は？」
「僕が片手で引いていくよ」
「え？　でも──」
「僕は大丈夫。 ──あ、もし君がイヤなら、あれだけど」
「ううん。そうじゃないわ」　首をふって否定する彼女。

　結局、僕の自転車の後ろの荷台に彼女は座った。
　それから、彼女の自転車のハンドルも片手でグイとつかむと、ペダルに力を込めた。始めはグラグラしていたけれど、だんだんと揺れは小さくなった。
　幸い、そこから先は、ずっと平坦な道のりだった。
　でも、しばらくすると──
「やっぱり、少し危ないわ」　彼女は、そう言ってから降りると、そのまま僕の自転車の荷台の部分をつかんで走り続けてくれた。