「そのことをしっかり説明すれば、誤解が解けて、クラスのみんなもわかってくれるはずだよ」
「──ありがとう。そう言ってくれて──。
　でも──　それでも、やっぱり、このままでいいのよ」
「え？　どうして？
　──このままじゃ、つらくない？」
「ちょっとね。 ──でも、大丈夫よ。 ──。
　誤解されるようなことをしてしまった私にも悪いところがあったと思うし──　それに、クラスのみんな、それぞれ受験勉強とかでストレスたまっちゃって、自分のことで精一杯になっているのよ。 ──みんなも、つらいのよ」
「そんな──」
「かりに、このウワサが否定されたとしても、今度はウワサを言い出した人の立場が、きっと、おかしくなっちゃうでしょ？」
「──」
「それに、この場合、みんな、大して悪気があったわけじゃくて、ただ、なんとなく──　ただ、なんとなく、そういう態度をとってしまっていただけのことなんだと思う」
「──」
「いいのよ。このままで。そういったイヤな連鎖は、どこかで、きっちり断ち切らないと──」
「──」
「それに──　ウワサを鵜呑みにせず、真実を知ろうとしてくれたあなたがいる。 ──本当に、ありがとう」
「──。そんな──」　・・・　「──それより、礼を言うべきなのは、こっちの方だよ」
「──え？　どうして？」　彼女が聞き返した。
「だって──　プールの更衣室で倒れてしまったときのこと、急いで先生方に知らせてくれたのは君だったって後から聞いたから──。
　だから、どうもありがとう」
「ううん」　はにかむ彼女。 「それより、大丈夫だった？」
「ああ、おかげ様で──」
「よかった」
「──」　・・・　「──軽蔑した？」
「え？　軽蔑も何も──。
　──先生から話を聞いたわ。考えごとをしていて間違えて入っちゃったんだって──。許してあげてねって、先生言ってたよ」
「──」
「──それに、冗談でも言っていたわ。かりに、男の子だから、好奇心から入ってしまったとしても、許してあげてねって」
「ぜぇったい、わざとじゃないよ！！　絶対に！！」
「フフフッ。わかっているわ。大丈夫よ」
「──」
「男の子に好奇心があったとしても──　わざと堂々と女子更衣室に入るなんて、そんな割に合わないこと、ふつう誰にもできないわ」