同じ春から、彼女と僕は、大学生活をスタートさせた。
　ふたりは、それぞれのアパートで、それぞれ一人暮らしを始めた。
　その新しい大学生活の中で迎えた最初の初夏──
　ふたりとも帰省した折に、約束通り、一緒に岬へ行った。

　おじいさんのいる岬へ──。
　そう。 それは、あれから、ちょうど７年目の初夏だった。
「おお。とっても、かわいらしい子じゃあ」　彼女を見たおじいさんは言った。
「──」　照れている彼女。
「おまえさんには、もったいないくらいじゃの？」　おじいさんは、僕に向かってそう言ってから、無邪気に心笑んだ。
「──」　きまり悪がる僕。
「では──」　おじいさんは何やら封筒を僕に差し出した。
「ん？　何だい？」と僕。
「第７フレーム、最後のワクワク枠じゃ。この中に入っておる」
「お！？」　さっそく中を見ようとした。すると、
「おっと待った」と言って、おじいさんは、さえぎった。「中身は、あとで見ておくれ」
「あとで──」
「──こいつは究極のフレームじゃ」
「究極！？」
「まあ、厳密には、究極と、 ──そう言われておる」
「言われているって──」
「何やら“究極の意味”を教えてくれるらしい。その“究極の意味”は、ライフのパズルを解く究極のカギとなるらしい。
　じゃが、いまだかつて、その“究極の意味”に、たどり着いた者はおらん、 ──らしい。わしも、たどり着けなかった、 ──らしい」
「らしいって──」
「おまえさんらなら、その意味に、たどり着けるかもしれん。楽しみにしておるよ」
「──」
「早いもんじゃ。もう大学生かあ」　はるかな水平線を眺めながら、おじいさんは話し続けた。「懐かしいのぉ。おまえさんが、ここに初めて一人でやって来たときのこと──。おお、ランプベリーも一緒じゃったな
「──」　・・・
「彼は大きなシャベルを持って、ここに宝探しをするためにやって来たんじゃよ」　おじいさんは、彼女に向けて話し始めた。
「え？」　少し驚く彼女。
「そして、わしよりもずっと小さな体で、全身が隠れるくらいまで穴を掘り続けよったんじゃ」
「ええー！？」　とても驚く彼女。
「──お嬢さん」
「はい」
「どうもこの若者は、熱中しすぎる頑張り屋さんであるらしい」
「わかります。 ──フフッ。なんてったって、プチ・マップ作りに熱中しすぎて、女子更衣室に入っちゃうくらいですから♪」
「アッハッハッハッハッ！」　おじいさんは笑った。
「──」　いつのまに、その理由を・・・
　──あっ、コンパリーチェが、彼女に教えてあげたから！？
　──「イメージアップ間違いなしよ。キャハン♡♪」
　笑いながら何度かうなずいたおじいさんは、再び口を開いた。　「──どうか優しく見守ってやってくだされ」
「はい！」　彼女の表情が、いっそう明るくなった。