広げて乾かされている地図のそばで、ふたりで座って、はるかな水平線を眺めていた。

　空を舞っているカモメたち──。
　ポ───ッ　テッテッテッ …　 遠くへ進んでいる船──。

「それにしても、地球ってさあ、でかいようで小さいよね？」と僕。
「ん？　なぜ、そう思うんじゃ？」
「だって──　ここで、こうして水平線を見ていると、“ああ、やっぱり地球って丸いんだなあ”って、そう感じるから。
　──せいぜい、数十メートル程の高さから見ていてもだぜ？」
「おお、そうじゃのぉ」　おじいさんが、しみじみと応えた。
「──アハッ。実際に、フワフワ無重力の宇宙船の中から真ん丸い地球を眺めたら、感動ものだろうね？」

「うむ。そうじゃな」　おじいさんは、そのまま、しばらくの間、遠くを眺めた。
　それから、おじいさんは、ふいに口を開いた。
「若者よ──」
「──うん？」
「宇宙人は、いると思うかい？」
「は？　──え？　いきなり、どうしたの？　ＳＦの世界ならまだしも。
　 ──え？　おいじいさんは、どう思っているの？」
「いるとも」　あっさり答えた。
「どうして──　わかるの？」
「少なくとも、わしが宇宙人じゃからのぉ」
「ええっ！？」　言われてみれば・・・
「もちろん、おまえさんも宇宙人じゃ」
「は？」
「地球は、宇宙の中にあり、宇宙の一部そのものじゃ。それはつまり、“地球人が宇宙人である”ということにほかならない」
「まあ、そりゃあ、そうかもしれないけれど──」　 ・・・
「宇宙の中の地球が宇宙の一部そのものでもあるように、地球の中の地球人たちは、地球の一部そのものでもある。
　その事実を見失い続けるならば、あっという間に地球人たちは絶滅してしまうじゃろう」

「──」　・・・
「宇宙的な長い時間で見れば、地球人たちの生存期間は、まだまだ、ほんの一瞬にすぎないじゃろう。 ──どうなるんじゃろうかのぉ。地球人たちは──」
「──」　・・・　「──うん。どうなるんだろうね」