秋が深まりつつあったある休日のこと──

「大っキラーイ！　あんなやつう！　最低！」　コンパリーチェが叫んだ。
「え？　どうしたの？」と僕。
「あー！　やっぱり好きぃ〜！」
「ええ！？　──どっち？」
「あー！　やっぱりキライ！　考えるのもイヤ！」
「──例えば、どんなところが嫌いなの？」
「例えば、優柔不断なところ。大っキライ！」
「──もしかしたら、その部分は、それだけ“じっくり深く考えている”という意味で、長所かもしれないよ」
「ううん。ちっともよくない。それに優し過ぎるし」
「アハッ。それってさあ、冷た過ぎるより、明らかによくない？」
「あーっもう！　キライなものはキライなの！　リクツじゃないのよ！　プンプンプンプン！」　コンパリーチェは、それきり黙りこくってしまった。

　 僕は、しかたなく、コンパリーチェを机の上に置いておくことにした。