彼女は箱を開けた。その中から顔をのぞかせたのは、丸みを帯びたシルバーの輪郭に、淡いピンク色の宝石がはめ込まれている小さなペンダントだった。
「うわ〜、かわいい〜。　──ありがとう。うれしい」
「──ごめんよ」
「え？　何が？」
「──。 だから──　もしかしたら僕のせいでストレスをため過ぎてしまって──　そのせいもあって、カゼひいてしまったのかなって思ったから」
「──」
「最近、確かに“究極の意味”探しに没頭し過ぎて、きちんと力になってあげられなかったような気がする。こっちは力をいっぱいもらっていたのに。 ──だから、ごめん」
　しばらくの間、彼女は視線を外していた。
　かと思うと、ふと口を開いた。「──アハッ♪　お互い様よ」
「え？」
「私も、あなたから、いっぱい力をもらっていたよ。あなたの存在が、つらい試験勉強を乗り越えていく際の、心の支えになっていた──。
　有意義な目標に熱中して、少年のようにイキイキしているあなた。私、そんなあなたが──　好き」
「──」　　・・・
「早いとこ、発見しちゃって？　究極の意味をサクッと見つけて、私を早く安心させて？　私が、いっぱい、いっぱい笑っていられるように。 ──アハッ♪　クヨクヨしているより、気持ちよく笑っている方が、免疫力って、ほどよく保たれているんでしょ？」
「ああ、まあ──」
「──ああ、スペシャル・パンケーキおいしかったあ！　こんなに幸せになれるのなら、年に10回くらいカゼひきたいよ〜♪」
「──っていうか、このパンケーキには、バースデーケーキの意味があるんだぜ」
「え！？　誕生日がくるだけで、このケーキを食べられるの？　だったら、年に11回も食べられるってことよね？　やったぁ♪」
「バ〜カ♪」　ほほ笑みながら、そう言った。
「アハハハッ！♪」　とびっきりの笑みがこぼれているのがマスク越しでも、はっきりわかった。