桜が満開となったのは、それから何日か経ってからだった。

　ちょうどそのタイミングに、ふたりの都合が合ったので、彼女と僕は、お花見デートをすることにした。陽光に透ける桜の花びらたちは、彼女の魅力を増幅しているように思われた。

　花見デートのゴール地点は、春の海辺だった。

　浜辺に座っているふたり──。
　そこは、ちょうど、コンパース一家と別れた場所でもあった。

　ザブーン、ザザザシュー …

「そう言えば、あの成果、楽しみよね。あれから、私、どうなるか、ずっと楽しみにしていたわ」と彼女。
「ありがとう。　──あれから、あれこれ考えたよ。そしたら──　さっそく見つかったよ」と僕。
「何が？」
「人間社会レベルの3ステップスから、ズーム・アウトすると見える、さらに高次のレベルの3ステップス──」
「え？　──どんな3ステップスなの？」
「うん。まず、“人類という種を構成する人間”どうしが関わり合うことで成立する人間社会レベルの3ステップスがあるように、“さまざまな動物や植物、細菌… の種を構成する個体”どうしが関わり合うことで成立する個体社会レベルの3ステップスがある──」
「個体社会レベル──」
「そう。それは、アリやハチといった社会性昆虫とか、チンパンジーやゴリラを含む社会性の高い霊長類とかを構成する個体どうしの間で生じるだけとは限らないよ。少なくとも、両性生殖するならば、すなわち、“オスとメス”の関わり合いで繁殖するならば、少なくともこの時点で個体どうしが関わり合うわけだから、これだけで個体社会レベルの3ステップスが成立しているよ。まあ、これは、わりとイメージしやすいと思うけど──」
「──」　桜の花びらのように、かすかに色づく彼女の頬──。
「って、別にイメージしなくてもよくて──」　あわててフォローし、話を続けた。 「たとえ、無性生殖の生物であっても、個体社会レベルの3ステップスが成立しているよ。なぜって、無性生殖の生物の場合も、ある個体が生殖し続けられるかどうかが、栄養分や日光などのエネルギーが限られているがゆえに、周囲に存在する同種の個体の存在に影響されてしまうことになるから」
「──つまり、生殖していれば、有性か無性かに関係なく、あらゆる種において個体社会レベルの3ステップスが成立しているのね？」
「その通り。もちろん、人間社会レベルも個体社会レベルの一例だよ」
「──ええ、そうね」
「それで、その個体社会レベルの3ステップスからズーム・アウトすれば、さらに高次レベルの3ステップス、生態系レベルの3ステップスが見えるんだ」

「生態系レベル──」
「そう。例えば、種Aと種Bのが関わり合って生まれる生態系レベルの3ステップスは、次のように示すことができるよ」

「生態系レベルの3ステップスは、人間社会レベルの3ステップスと、よく似ているね」
「そうさ。やっぱり、フラクタル的に相似だからね。だから、生態系レベルのライフの存続を決めるカギの1つも、やっぱり、『Love‐Loveの関係』の構築なんだよ。人間社会レベルのときと同様に──」
「『Love‐Loveの関係』──」