それから１年半近く経った頃、心笑君の新しい物理学の体系は、さらに磨き上げられて、ついに公表されるに至った。
“時間が無限でないから”という条件の中の妥協の産物の一面もあったとのことだったけれど、心笑君らしい見事なフルーツだった。
　さまざまな新しい統合が示されていたのみならず、健やかな全人類レベルのライフの誕生のためにもなるだろう、画期的な応用にたどり着くためのヒントも示されていた。

　心笑君は、かつて人類が2000年間地球中心の思い込みにとらわれていたように、これまで人類が300年間エネルギーの永久不滅の思い込みにとらわれていたことを指摘した。
　心笑君は、“エネルギー保存則が成り立つからエネルギーは消滅も生成もしない”とは決して言えないことを指摘した。
　心笑君は、エネルギーの消滅を、“ニュートンのりんご”ならぬ“ココエのりんご”と象徴的に呼んでもいいような、簡単な実験で実証できることを指摘した。
　心笑君は、電荷エネルギーや磁極エネルギーが究極の再生可能エネルギーであること、それらが例えば太陽光のエネルギー源であることも示した。
　心笑君は、陽子や中性子といった核子１つの質量エネルギーよりも桁外れに大きい、電子１つの電荷エネルギーや磁極エネルギーから、はるかに安全に、桁外れに効率よくエネルギーを引き出せる可能性を示した。
　心笑君は、この新しい物理学によって、さまざまな問題を根本的に解消できる可能性があることを指摘した。
　…
　これらの新しい物理学の成果は、自然科学に革命をもたらすだけでなく、健やかな全人類レベルのライフの誕生のためにも、健やかに天体生態系社会レベルのライフの一員になるためにも役立ち、多くの人々を喜ばせられるはずだと僕らは確信し始めていた。
　心笑君は、「これらの成果の一部は、もしかしたら本当にいて何万年何億年も存続しているかもしれない宇宙人にとっては、すでに常識的な内容であるかもよ」とも冗談半分で言っていた。
　心笑君は、きっと、多くの人々に祝福されながら、もっともっと幸せになれるだろう。 僕は、そう確信し始めていた。