大学２年目の初夏──
　僕らは、また一緒に、おじいさんに会いに岬へと向かった。

　それまでの発見で瑠音は十分満足していたようで、「これらが究極の意味かもしれないね？♪」と言っていた。
　もちろん、それまでの発見も、とてもよい発見だと思った。
　でも、内心──
　これらの意味に、あのおじいちゃんがたどり着けなかったとは考えにくいのではないか？
　そんな気がして、僕は物足りなさを感じていた。

「この急な上り坂って──　ハァ、ハァ…　何度来ても、きつくてイヤだね。ほんとイヤんなっちゃう〜」　坂を上りながらの彼女。
「“イヤイヤ”言うなって──。 よけいイヤに思えてくるだろ？」と僕。
「だって、イヤなんだもん。ハァ、ハァ…」
「ちょっと休もうか？」
「ううん、大丈夫。ありがとう。ハァ、ハァ…
　思ったんだけどさあ。こんなに坂がきつくてイヤなのに、それでも坂を上るっていうのは──　おじいさんに会いたい気持ちが、急な坂を上るのがイヤという気持ちより、まさっているからよね？　ハァ、ハァ…」
「そうだね。
　──うん。人生、“100％好き”とか“100％いい”とかだけで成り立っているとは限らないんだね」
「ホント、微妙なことってあるよね。ハァ、ハァ…
　実際の人生では──。ハァ、ハァ…」
「──確かに、好きキライ、よい悪い…が、それぞれ微妙な比率関係で成立しているときもある。だから、ときに迷ったり躊躇したりもするし──　ときに動きが取れなかったりもする」
「そうね。ハァ、ハァ…」
「それでも、ときには、思いきった何かのアクションを取ること、その結果に応じた新たな別のアクションを取ること… が必要になったりして──」
「──ええ、そうね。ハァ、ハァ…」

　坂を上りきると──
　なだらかな下り勾配の先に、“キラリ”が見えた。

　その認識は、それまでの僕らの疲れを、一瞬で吹き飛ばしてくれた。海風とともに──