「“もしもコンパース一家が異星人だったら説”のおかげで得られる結論は、ほかにもあるよ」　話を広げる僕。
「それは、なあに？」　聞き返す瑠音。
「それは、さまざまなペーパー・コンパス社会たちは、お互いに恵みやフルーツを与え合って『Love - Loveの関係』を構築して、健やかな全ペーパー・コンパス類レベルのライフという、さらに高次レベルのライフに至っているはずだってことさ」
「──え?」
「さまざまなペーパー・コンパス社会たちは、『Love - Loveの関係』を構築して、健やかなペーパー・コンパス社会レベルのライフ、生態系レベルのライフ、天体生態系社会レベルのライフに至っているだけでなく、健やかな全ペーパー・コンパス類レベルのライフにも至っているからこそ、あれほどの高度な科学文明に到達しながら長く存続できて、僕らと出会うこともできていたはずだってことさ」


「へえー」
「だから、今の地球科学レベルをあるかに超える高度な科学文明に到達しながら、われわれに出会えるほど長く存続しているライフが、もし実在しているならば、少なくとも、『Love - Loveの関係』を構築することの重要性を知っているはずで、本来、さまざまな意味で『Love - Loveの関係』を構築しようと実践し続けているはずなんだよ。
　例えば、それほど高度な科学文明に到達しているライフが、もし実在して、新たな天体にたどり着いたなら、その暁には──　そこに存在する天体生態系との間に『Love - Loveの関係』を構築して、天体生態系社会レベルのライフを育むことこそを、第一目標にするはずなんだよ。

　もし、その第一目標を変更するとすれば、新たな天体に存在する“彼らにとっての異星人”が、彼らに対する、あるいは、天体生態系社会レベルのライフに対する脅威となり続けてしまうような、やむにやまれぬ非常事態に限ると思うよ。
　健全な免疫細胞たちがもたらす、発熱を含む本格的な活動が、本来、個体レベルのライフが脅威を受け続けるような、やむにやまれぬ非常事態に限るように──」
「──」　再び、きょとんとしている瑠音。
「だから、“もしも”の話だよ。“もしも”の──」
「ええ、そうよね。“もしも”の話──。 ──でも、たとえ“もしも”の話だとしても、学べることが、いっぱいありそうね？」
「ああ、そうだね」