しばらくベッドの上にいたけれど、何にも聞こえず──
　手に持ったときにだけ、話せるってこと？
　僕は、再び地図を手に持ってみた。
「コンバンハでございますぅ〜♪」　その声は、とてもおおらかで、朗らかで──　若い紳士のようでもあった。
「こ、こ、こんばんは」　──！！！
　コンパスの針の絵が、浮かび上がってクルクル回っているのがわかった。
「──」　──夢だ！　これは、ゼッタイ夢にちがいない！
「──」　夢ではないでございますぅ〜♪
「ワッー！！」　・・・　「──わ、わかるの！？　心の中で話すことも」
「わかるでございますぅ〜♪」
「──」　──本当かよぉ？
「──」　本当でございますぅ〜♪
「──」　！！！
　急いで地図を机の上に置いた。すると、コンパスの針の絵のクルクルは、しだいに遅くなり──　ゆっくり止まった。
　声に出して話せるだけじゃなく、心の中でも話せるってこと？