それから数週間が経過したある日、思いきって、コンパースとの会話を再開した。
「それじゃあ、未来のことも、今は何か話せるのかい？」と僕。
「はい、話せるでございますぅ♪　さっそく、わたくしの将来の夢を、お見せいたすでございますぅ〜♪　岬にいた彼、フレーム・マスターの中のフレーム・マスター公認の夢でございますぅ〜♪
　心の目で、ご覧いただけるでございますぅ〜♪」
「え？」 　・・・　 「──あっ、見える！」

　子どもらしき小さなペーパー・コンパスが１枚いて──
　全部で３枚のペーパー・コンパスが仲良く空を飛んでいる──
　それは、コンパースが、結婚して家庭を築いているらしい内容の未来のイメージで──
「うわぉ！　結婚するんだね？」
「そうでございますとも〜♪
　好きな相手がいるでございますぅ〜♪
　彼女と、ずっと一緒に生きて参りたいでございますぅ〜♪
　楽しみでございますぅ〜♪　ワクワクするでございますぅ〜♪」
「やるう！」　・・・　「──え？　これって、もしかして──
　僕の未来も見せることができるとか？」
「あなた様の未来をお見せすることは、できないでございますぅ〜♪　先ほどの未来は──　わたくしの、将来、叶えて参りたい夢でございますぅ〜♪　実現するかどうかは、まだ、わからないでございますぅ〜♪」
「そうなんだ」
「あなた様の未来──　あなた様の、将来、お叶えになられたい夢を拝見いたしたいでございますぅ〜♪」
「え？　それは──」　それまで、あまり深くは考えていなかったけれど──　漠然とだけれど、あった。「──ああ、やっぱいいや。恥ずかしいや」
「いえいえ、ぜひどうぞでございますぅ〜♪──」
「──。──。──。何か、こう──　心地よくて、うれしくて、おいしくて──」　・・・　「──そう！　フルーツのような何かを生み出すこと？
　それは、誰かの心からの笑顔かもしれないし──　何かの作品かもしれないし──　何かについての誰かの活躍かもしれないし──
そんな──　そんな感じの──」　・・・　「──あれ？　何、言っているんだろうね？」
「すばらしいでございますぅ〜♪　楽しみでございますぅ〜♪」
コンパースは、真剣に受け止めてくれたんだ。