夏休み最終日、ランプベリーを連れて、海の砂浜まで散歩した。
　波打ち際を駆け回っているランプベリー──。
　腰を下ろしたまま、海と水平線と空を眺めている僕──。

　思えば、去年の宝探しのとき、おじいちゃんに差し入れてもらった、いちご──　むちゃくちゃおいしかったなあ。
　今年の、お土産のいちごもおいしかった。
　いちごって、どうしてあんなにうまいんだろう？
　・・・
　それにしても、おじいさんの過去は──
　・・・　かわいそうすぎるよ。
「──ハアー」　ため息が出た。

　それから、自身の過去について、あれこれ思いめぐらせ始めた。
　──僕の過去は、一体、何だったのだろう？

　小さい頃から、ランプベリーに加え、５歳年上の兄とも、いっぱい遊んでいたっけ──。
　キャッチボールをしたり、サイクリングしたり、魚釣りに行ったり、オセロをしたり、トランプをしたり、人生ゲームをしたり…。
　カブトやクワガタを捕るために、橋の街灯ポイントに初めて行ったのも兄と一緒だった。
　ザリガニ釣りに初めて行ったのも兄と一緒だった。
　サッカーのキックの仕方を初めて教わったのも兄だった。
　将棋の駒の動かし方を初めて教わったのも、ルービックキューブの仕方を初めて教わったのも兄だった。…
　その兄は、学年が上がり、受験勉強が忙しくなるにつれ、あまり僕と遊ばなくなった──。

　その代わり、ランプベリーに加え、小学校のクラスメイトと遊ぶ頻度が増えたっけ──。
　河原で冒険ごっこをしたり、ザリガニ釣りをしたり、学校近くの山の上のアスレチック・コースに行ったり、遊びでバドミントンをしたり、ローラースケートをしたり、友達の家でゲームをさせてもらったり。…
　──これらも楽しかったなあ。

　月刊雑誌の懸賞に何度か応募して、結果をすごく楽しみに待っていたこともあったっけ──。 唯一当たったのは、残念賞の「ドラえもんシール」だけだったけれど──　それでも、うれしかったな。今も大事に宝箱にしまってあるっけ──。

　それから、今から思えば、どうでもいいようなことに、妙に一生懸命になっていたな。
　例えば、新パ──牛乳びんの新しいふたをメンコにした遊びが流行したときには、牛乳の会社に、せっせと手紙とともに返信用の封筒を送り、新パを送って頂いたっけ──。牛乳の会社の方は、どんな気持ちで新パを送ってくださっていたのだろう？
　例えば、５、６年生のときの担任の先生に出す年賀状のデザインを、あれこれ考えに考えて練り込んでいたこともあったっけ──。別に、それを目指していたわけじゃなかったけれど──　その年賀状が、２年連続でクラスの人気投票で１位に選ばれたのは、理屈抜きで、うれしかったなあ。クラスメイトは、どんな気持ちで投票してくれていたのだろう？
　・・・