気付いたら、僕は保健室のベッドの上で横になっていた。

　　何があったんだっけ？

　　──4校時目は体育の水泳だったはずだ。

　　あのとき、あそこで、僕が見たものは──　 ・・・
　　──!!!!!

　　あの後どうなったのだろう？
　　あの後いったい何が起きたのだろう？

　　・・・
　　──そうだ！　そもそも、夢だったんじゃないか？
　 　うん、夢にちがいない。

　　どうか夢でありますように──

　　・・・
　　かりに夢でなかったとしても、少なくとも彼女には、
　どうか知られていませんように──

　　・・・

　おそるおそる上半身を起こした僕は、意を決して保健室にいた保健の先生に話しかけた。
「あ、あの、先生──」
「あら、気づいた？　大丈夫？」
「あ、はい。 ──あのぉ、いったい何があったのでしょうか？　──それに、変な夢を見たようです」
「あら、よく覚えていないのね」
「──」　　・・・
「──あなたは、女子更衣室で気を失って倒れちゃったのよ」
「──」　　！！！　 現実？　・・・
「心ある有志が急いで私たちに知らせてくれて、担架を使ってあなたをここまで運んだのよ」
「──。　──。　す、すみませんでした。あ、あの、あのとき、僕は、イン、インア…」
「いんや？」
「あ、イエ、あの、考え事をしていて──　気付いたら──　…」
　保健の先生は、やさしくほほ笑んだ。「大丈夫よ。それより、ゆっくり休みなさい」
「はい」　僕は潔く横になった。

　──そのまま天井を眺め続けた。

　　ズドドドーン！！
　何か、とてつもなく大きなものが崩れ落ちるような感覚に襲われた。

　こうして、 わがプチ・マップ作りは、わが“恋のきざし”のときめきを失恋の痛みへと一変させたのだ。
　　そりゃないぜ。僕のこんなに恥ずかしい事件は、彼女にも、
　間違いなく知られてしまっただろう。
　　最低最悪だ。僕の青春は、おしまいだ。
　　──いや、それだけじゃない。
　　ウワサは、たちまちクラス中に、いや学校中に広がり、みん
　なは、そういう目で僕を見るだろう。
　　ああ、人生、もうおしまいだ！