「お姉ちゃんに会わせてくれーい！♪　今すぐ、お姉ちゃんに会わせろーい！♪」
　続、コンパルンクルの叫び──。
「だから、もう少し待ってくれないかい？　来週、きっとお姉ちゃんに会えるから」
「来週じゃイヤだ！　今日、会いたい！　今すぐ会いたい！
　──今から会いに行こうぜーい！」
「うーん」　・・・　「──でも、困ったなあ」
「どうして、困るんだ？」
「うん。お姉ちゃん、大事な試験を控えているから、今は勉強に集中しなきゃならないんだ。だから、もし今からお姉ちゃんに会いに行けば、邪魔になってしまうんだよ」
「シケンて、何だ？」
「うん。
　試験というのは、“知識や知恵や考える力をよく身につけたね”って評価するもの。お姉ちゃん、この試験をパスする必要があるのさ」
「もし、パスしなかったら？」
「お姉ちゃん、夢の実現から遠ざかって、ものすごーく悲しむ。もしそうなったら、どう思う？」
「──イヤだ。そうなってほしくない」
「うん。僕も同じだよ。
　──じゃあ、どうしようか？」
「うん、待ってる。今日、行くのやめる」
「えらーい！
　──うーん、これは“思いやりの心”の獲得にともなう“過剰な自己中心性の克服”ってやつだね。パパは、うれしいよ。って、パパじゃないけど」
「ただ──　お姉ちゃんに、何かしてあげたいな。何をしたら喜ぶかなあ？」
「うーん、そうだなあ──」　・・・　「──お姉ちゃんに、試験がうまくいくよう、応援メールを送ろうか？　きっと喜ぶよ」
「おくる！　おくる！　おうえんしたーい♪」

　周囲からの意志もブレンドした“周りと調和している自らの意志”も育めること── 　コンパルンクルは、やはり健やかに成長していると思った。

　　育児は、単に子どもの欲求を何から何まで満たしてあげれ
　ばよいわけではないのだろう。

　 “何が本当に子供のためになるのか”の判断は、実は、
　とても難しいのだろう。