上半身をゆっくり起こした僕は、意を決して、保健室にいた保健の先生に話しかけた。おずおずと──。
「あ、あの、先生──」
「あら、気づいた？　大丈夫？」
「あ、はい。 ──あのぉ、いったい何があったのでしょうか？　──それに、変な夢を見たようです」
「あら、よく覚えていないのね」
「──」　　・・・
「──あなたは、女子更衣室で気を失って倒れちゃったのよ」
「──」　　！！！　 現実？　・・・
「心ある有志が急いで私たちに知らせてくれて、それから担架を使ってあなたをここまで運んだのよ」
「──。　──。　す、すみませんでした。あ、あの、あのとき、僕は、イン、インア…」
「いんや？」
「あ、イエ、あの、考えごとをしていて──　気づいたら──　…」
　保健の先生は、やさしくほほ笑んだ。「大丈夫よ。それより、ゆっくり休みなさい」
「はい」　潔く横になった。

　──そのまま天井を眺め続けた。

　　ズドドドーン！！
　何か、とてつもなく大きなものが崩れ落ちるような感覚に襲われた。

　こうして、 わがプチ・マップ作りは、わが“恋のきざし”のときめきを失恋の痛みへと一変させたのだ。
　　そりゃないぜ。
　　こんなに恥ずかしい事件は、彼女にも、間違いなく知られて
　しまったはずだ。
　　最低最悪だ。青春は、おしまいだ。
　　──いや、それだけじゃない。
　　ウワサは、たちまちクラス中に、いや学校中に広がり、誰も
　が僕をそういう目で見るだろう。
　　ああ、人生、もうおしまいだ！