そこは、あの岬だった。
　そこから見える海の中に、人の姿があった。

　それは女の子──
　高校で初めて同じクラスになった子──

　それまで、あいさつ以外に言葉を交わしたことは、ほとんどなかった。


「おいでよぉ〜！　一緒に泳ごうよぉ〜！」　彼女は立ち泳ぎをしながら僕に向かって明るくそう言うと、海の中をスイスイと泳ぎ始めた。　　水泳、得意なんだ。
　そのときだ。
「痛ぁーぃ！」と彼女の叫ぶ声が聞こえた。　　！！！
「大丈夫かあ〜！？」　僕が尋ねても、返事はなかった。
　波間で上下しながら苦しそうにしている様子が、明らかに見て取れた。
　　──おぼれそうになっている！？
「ほら、助けに行かんか？」　いつの間にか、おじいさんが側にいて── 　「──大丈夫。おまえさんなら、できる」　そう言った。
「できるって──　一度おぼれた身だぜ？」と僕。
「自分を信じろ。おまえさんは、すぐれたライフセーバーじゃ。
世界一のライフセーバーじゃ。彼女を余裕で助けることができる」　おじいさんは、そう言い切った。
「──」　　・・・

　そして、結局、　──ドボン！

　僕は飛び込んだ。
　海の中に──。