「人間レベルからズーム・アウトすると見える３ステップスが人間社会レベルだったけれど──　さっき言ったとおり、人間レベルから逆にズーム・インすると見える３ステップスもあるんだよ」と僕。

「それは、なあに？」と瑠音。
「うん。それが、細胞社会レベルの３ステップスさ」
「サイボウ社会？」
「そう。細胞とは、“頭の先から足の先までの全身を構成する基本単位”のことで──　感覚細胞、神経細胞、筋肉細胞、免疫細胞…を含めて、およそ何百種類に及ぶ細胞たちが人間を構成しているんだよ」
「何百種類！？」
「そう。それで、ある個人が持っている細胞の数は、何十兆個にも及ぶのさ」
「何十兆個！？」
「そう。それで、それらの細胞の１つ１つは、ある決まった役割──何百種類の中の１つの役割──を果たすように設定されていて、その設定に基づいて生存しているんだ。
　──で、まずは、それが細胞レベルだね」
「細胞レベル──」
「そう。それで大切なポイントは、１つ１つの細胞が個々に生存しているだけではないってことさ」
「──あ！　もしかして、“恵みやフルーツの与え合い”？」
「そう。その通りだよ。それは人間社会レベルの場合と同じなんだ。
　循環の大部分を担う心臓や血管などを構成する細胞たち
　呼吸の大部分を担う肺などを構成する細胞たち
　運動を担う骨や筋肉を構成する細胞たち
　栄養の供給を担う胃腸などを構成する細胞たち
　外界からのバリアを担う皮膚や粘膜などを構成する細胞たち
　血液の浄化を担う腎臓などを構成する細胞たち
　ホルモンの分泌を担う下垂体や副腎、性腺などを構成する細胞たち
　情報の伝達を担う脳神経などを構成する細胞たち
　免疫を担う血液などを構成する細胞たち
　…
　さまざまな種類の細胞どうしは、互いに恵みやフルーツを与え合いながら、支え合っているのさ」
「──へえー」