ザブーン、ザザザシュー …
　相変わらず、夏の海の心地いい波の音が心の中に響き渡っていた。

「ライフは、生体高分子レベルのライフ、生体高分子社会レベルのライフ、細胞レベルのライフ、細胞社会レベルのライフ、人間レベルのライフ、人間社会レベルのライフ、いずれも、３ステップスという生成過程を経て誕生している。
　そのことは、『コトバ』の方向の“自然法則 by３ステップス”をベースにして、ライフという『カタチ』の方向の実在が誕生したと見なせる。まあ、これがライフの本質の１つだね」と僕。

「──１つということは、ほかにもあるの？」と瑠音。
「ある。もう１つの本質は、『カラダ　アタマ』のフレームを“ミクロの生体高分子社会レベルのライフからマクロの人間社会レベルのライフまで”適用すると見えるんだよ」
「へえー。どんな本質なの？」
「それぞれのレベルのライフを支える重要な部分、すなわち、『アタマ』の方向の部分を持っているという本質さ」
「──ウ〜ン」
「具体的に見ると次のようになる」

「ウーン──　何となくわかるような、わからないような──」
「うん。まず、生体高分子レベルのライフについて見てみるよ。この生体高分子レベルのライフを支える重要な部分は、一部の低分子のセット──特に、酵素の活性中心だよ。この部分は、もし損なわれてしまえば、“タンパク質やRNA”などの酵素としての働きが失われて、生体高分子レベルのライフが失われてしまう──　それほど重要な部分なんだよ」
「──ウン」
「生体高分子社会レベルのライフを支える重要な部分は、一部の“生体高分子レベルのライフ”のセット──特に、RNA、DNA、調節タンパク質…を含む遺伝子発現回路だよ。この部分は、もし損なわれてしまえば、“タンパク質の合成”や“DNAの合成”に基づく発現や複製が達成できなくなって、生体高分子社会レベルのライフが失われてしまう──　それほど重要な部分なんだよ」
「──ウン」
「細胞レベルのライフを支える重要な部分は、細胞核、一部の“生体高分子社会レベルのライフ”のセット──特に分化や増殖を決める遺伝子発現回路を含む細胞核だよ。
　この細胞核は、もし損なわれてしまえば、“細胞の機能や構造を決める分化”や“細胞数をほどよく保つような増殖”が達成できなくなって、細胞レベルのライフが失われてしまう──　それほど重要な部分なんだよ」
「──ウン」
「細胞社会レベルのライフを支える重要な部分は、神経の中枢、一部の“細胞レベルのライフ”のセット──特に神経節や神経核…を含む神経中枢だよ。この神経の中枢は、もし損なわれてしまえば、例えば、無意識の呼吸や反射的な運動が達成できなくなって、細胞社会レベルのライフ、例えば、睡眠状態の人体のライフや植物状態の人体のライフが失われてしまう──　それほど重要な部分なんだよ」
「──うん」
「人間レベルのライフを支える重要な部分は、頭脳、一部の“細胞社会レベルのライフ”のセット──特に、感覚、感情、思考、想像、言語、知恵、学習、判断、創意工夫、行動…を含む働きをする頭脳さ。
　この頭脳のさまざまな働きのおかげで、例えば、どうすれば食糧を得られるか、どうすれば危険な動植物を回避できるか、どうすれば衣類によって体温を調節できるかを考えて対応できたり、煙や水を間違って吸い込まないようにするために、あるいは、声を出して助けを求めるために呼吸をコントロールできたり、どうやって気持ちや思いを相手に伝えるかを考えて表現できたりする。
　だから、この頭脳は、もし損なわれてしまえば、食糧調達、安全確保、体温調節、呼吸の調節、コミュニケーション…が達成できなくなって、人間レベルのライフが失われてしまう──　それほど重要な部分なんだよ。
　もちろん、頭脳は、みんなのために、どうすれば貢献できるかを思考するためにも、すぐれたアイデアや有効なツールをタイムリーに創造するためにも、衝動や感情をコントロールしながら情緒を育むためにも役立つわけで──」
「単に生きのびるためだけでなく、よりよく生きるためにも、重要な部分なのね」
「そうだね」
「──じゃあ、次の、人間社会レベルのライフを支える重要な部分は？」と彼女が尋ねた。
「それは、人間社会レベルのライフの中の先導的な存在、一部の“人間レベルのライフ”のセット──特に、元首、首長、司法官、立法官、行政官、経営者、資本家、アーティスト、技術者、学者、作家、メディア…を含むリーダーだよ。
　だから、この人間社会レベルのライフの中の先導的な存在は、もし損なわれてしまえば、人間社会レベルのライフの安全、安定、成長、発展、成熟が達成できなくなって、人間社会レベルのライフが失われてしまう──　それほど重要な部分なんだよ」
「ええ、そうね」
「これらのように、生体高分子レベルのライフ、生体高分子社会レベルのライフ、細胞レベルのライフ、細胞社会レベルのライフ、人間レベルのライフ、人間社会レベルのライフは、それぞれ、それぞれのライフを支える重要部分を持っている。

　つまり、それぞれのレベルのライフの全体が、それぞれのライフを支える重要部分のおかげの存在であることが、もう１つのライフの本質なのさ」
「ふーん」
「──ところで、重要部分がライフを支える過程は、第７フレームの第１ステップから第２ステップに相当しているから、次のように示せる。

　重要部分が支えるライフの営みには、誕生、成長、発達、発展、成熟、持続…が含まれる。
　だから、例えば、ライフの誕生の過程は、厳密には、『カタチ　コトバ』の枠に『カラダ　アタマ』の枠も交えて、次のように示せたことになる。

　このことは、細胞レベルのライフ、細胞社会レベルのライフ、個体レベルのライフ、人間レベルのライフ、人間社会レベルのライフ…いずれのライフの誕生の過程にもあてはまる」
「──うん」
「一方、例えば、“宝の地図だ”から“宝探しに行こう”と決めて実際に宝探しに行く過程も、ライフを誕生させていたり、ライフを成長させていたりしていて、『カタチ　コトバ』と『カラダ　アタマ』の両方の枠の上で繰り広げられていたと示せる。

　それは、“お腹が空いた”から“何かを食べよう”と決めて実際に食べる過程、“寒い”から“厚着しよう”と決めて実際に厚着する過程を含むライフを持続する過程、詩や写真を育んだり、子育てしたりを通じて、成長、発達、成熟する過程、新たな経済活動を含む何らかの営みを通じて、人間社会が発達、発展する過程も同じさ」
「──ええ、そうね」
「だから、ライフの誕生、成長、発達、発展、成熟、持続…いずれも、『カタチ　コトバ　カラダ　アタマ』のすべてのおかげだったことになる。

　つまり、『コトバ』の方向の“自然法則 by ３ステップス”のおかげでライフという『カタチ』の方向の実在が存在するという本質と、それぞれのレベルのライフが自身を支える『アタマ』の方向の重要部分を持っているという本質、両方の本質のおかげで、ライフの誕生、成長、発達、発展、成熟、持続…が成立していたのさ。
　しかも、これらの説明は、ライフだけでなく、物質──物理学や化学が扱う対象にも応用できる。
　第７フレームの第１ステップから第２ステップまでが『アタマ』の方向にあって、第３ステップが『カラダ』の方向にあると見なせるから──」