2.Cosmological Natural Selection〈宇宙論的自然選択〉について


　Cosmological Natural Selection〈宇宙論的自然選択〉という考えが存在する。
　 （『宇宙は自ら進化した　ダーウィンから量子重力理論へ』　リー・スモーリン著）


　このCosmological Natural Selection〈宇宙論的自然選択〉に合致する宇宙像として、リー・スモーリン（Lee Smolin）は、「より多くのブラックホールを生み出しやすい物理定数を持つ宇宙」を提案した。


　この「より多くのブラックホールを生み出しやすい物理定数を持つ宇宙」という考えのベースにあるのは──、
　“新しく生まれたブラックホールの中で、新しい宇宙が始まる”というアイデアにほかならない。
　（つまりは、われわれは、ブラックホールの中で育まれた宇宙で暮らしていることになる──）


　この“新しく生まれたブラックホールの中で、新しい宇宙が始まる”というアイデアを、このスモーリン氏の著書『宇宙は自ら進化した　ダーウィンから量子重力理論へ』で、初めて知ったとき、最初は拒絶すべきだと思われた。
　次の理由を考えたからである。
　・かつてビッグバンが起きて、現在も膨張し続けているという宇宙観と両立できない。
　・小さくてコンパクトなはずのブラックホールの中に広大な宇宙が広がっているわけがない。
　・ブラックホールは閉じているのに、この宇宙は平坦である。
　・ブラックホールには、とてつもなく大きな重力しているので、あらゆるものが、つぶされてしまうはずであるのに、この宇宙でそうなっていない。
　　…

　しかし、その後──　 心の中でひっかかり続けたまま、“EMOES”（素スピノールからの創発モデル）を育むために（or 検証するために）様々な文献を読む中で、次のことを新たに学んだ。

　・重力の強さを判断できる“ε＝GM/Rc²”の値が、“ブラックホール”と“我々の宇宙”だけが、ともに1になっていること　　（『新装版　相対論的宇宙論』　講談社ブルーバックス　P41）
　・遠い銀河ほど速いスピードで遠ざかるという説（宇宙が膨張しているという説）も、ビッグバンの説も、宇宙の加速膨張の説も、結局は、光の“赤方偏移”の観測結果にのみに基づいていること
　　つまり、実際には銀河が遠ざかっていないと考えられること。
　（「銀河はそれ自身が高速で後退しているのではないからだ。　銀河は静止しているが、その銀河存在する空間自体が膨張するために、後退しているように見えるだけだからだ。」）（『宇宙膨張は加速している』より──別冊日経サイエンス136『宇宙論の新次元』）
　・“宇宙の密度”が、「いいせんをいっている」こと。　（参考　『四次元問答』　講談社ブルーバックス　都筑卓司）
　「質問48　広大な宇宙全体を、1つのブラックホールと考えることはできませんか。
　　回答　大そう面白いことに気がつきました。　ブラックホールといえば非常に高密度の物体が必要だと思いがちですが、必ずしもそうではありません。もっとも簡単な模型を採用しますとシュバルツシルトの半径Rは、R＝2GM/c²です。　〜　　ブラックホールの中に天体は1つきりでなければいけない、などという規則はありません。　そこでおもいきり大胆に半径百億光年の球を仮定して、さきの式に代入してみます。そうしますと宇宙空間の平均密度が立方センチ当たり10^-28グラムなら、先の式が満足されることがわかります。　　しかし宇宙全体がユークリッド的（曲がりがないこと）であり、しかも球の表面という境界がある、などいうのはこれまでの一般相対論とはずいぶん話がちがいますが、十のマイナス二十八乗（百兆分の一のさらに百兆分の一）という密度はかなりいいせんをいっているような気がします。　〜」
　・弦理論に登場する、“Dpブレーン”の正体は、ブラックホールであること
　「われわれがD3ブレーンの中に存在する」という、ブレーンワールド説の一部は、われわれがブラックホールの中にいることを暗に認めている──。
　・宇宙全体の質量から計算するシュワルツシルト半径が、概算で100億光年という値になること。
　『ということは、百数十億光年のこの宇宙空間……というが、シュワルツシルトの式をそのまま適用すると、われわれの宇宙全体がブラックホールだということになる。　しかし……空を見てわかるように、光はまっすぐに走っている。地球上でわずかの（とても光を曲げられない）重力場しかない。〜。〜。
　しかし、百数十億年の大きさを持つわれわれの宇宙はシュワルツシルトの半径内にまとまっていて、外界とは分離したもの、つまり隔離されたものだということは考えられないこともない。ブラックホールとは、外からの情報は来るが内からは出ていかない、という一方的なものだが、何らかの意味でわが宇宙は孤立したものだ、という気もする』　 （p.221 『時間の不思議　タイムマシンからホーキングまで』　都筑卓司　講談社ブルーバックス）
　・「ペンローズ氏が説明した、新しいブラックホールができるときに生じる特異点」と「ホーキング氏が説明した、新しい宇宙の始まりとしての特異点」が、かなり似ていること

　　（ホーキング氏は、最初、ブラックホールの特異点は宇宙の始まりに相当すると考えた学位論文を出したこと）

　…



　その後、一般3Steps理論＆“EMOES”（素スピノールからの創発モデル）も考え合わせ、検討を重ねた結果──
　“我々の宇宙がブラックホールの中に存在しているという説”は、検討される価値があると思うのみならず、この考えこそが宇宙を説明するためにベストであると思うに至った。

　そして、この“新しく生まれたブラックホールの中で、新しい宇宙が始まる”というアイデアこそが──　 様々な問題解決のために、とても有効であることに気づいた。

　なぜなら、
　ダークマター”や“ダークエネルギー（宇宙の加速膨張）”（→EMOES宇宙論3）
　“宇宙の進化”（ターンオーバーがあり、物理定数が変化する、という意味での進化））“、
　“遠くの銀河の赤方偏移”
　“新しいブラックホールが作られる過程で、エントロピーが増大できる初期条件が整うこと”＆“宇宙の始まり（ビッグバウンス）”
　「ライフの世界と、物理学の世界がフラクタルな相似になっていること」
　　…
　 を含む多くの事柄を、統一的に（うまくかみ合わせて）、合理的＆シンプルに説明できるからである。

　例えば、『EMOES宇宙論1新しいブラックホールの中で起きること』で説明した内容は、この文脈でとらえると、まさに“フレッシュな宇宙が始まる準備”に、ぴったりと合致する。　すなわち、“4つの力”から重力＆原始的な力（byL_P光子）のみになり、重力子の密度が高まり、エントロピーが解消され…　 どれもこれも、「この宇宙はブラックホールの中」で育まれたという考えと調和している。


　つまり、“EMOES”（素スピノールからの創発モデル）は、スモーリンの説を支持する。
　すなわち、次の仮説を採用する。

　　仮説C2.1 　「新しく生まれたブラックホールの中で、新しい宇宙が始まる」

　この仮説が、EMOES宇宙論の根幹をなすものの1つとなる。




《物質＆宇宙空間の歴史（──ビッグバウンス、インレーション、ビッグバン）》

　ブラックホールの中で、新たな宇宙の誕生が準備され、ブラックホールの中で新たな宇宙が始まるということ──
　それは、 ビッグバウンス以降の宇宙の歴史は、“物質の再コンパクト化（再凝縮化）”と“それにともなう（物質周辺の）宇宙空間の再膨張”の歴史であったということを意味する。

　物質＆宇宙空間の歴史の全体像をまとめると次のようになる。

　銀河では、まさに、この“物質の再コンパクト化（再凝縮）”が進行してきている。
　そして、重力ポテンシャルエネルギーによる、この物質のコンパクト化＆宇宙空間の膨張は、現在も続き──
　それは加速している。
　（その過程が、現在、“加速膨張する宇宙”として観測されていることになる。
　　　このことは、ダークエネルギーの正体を探るヒントとなる→EMOES宇宙論3）


　※現在の宇宙論は、「ハッブルによる、より遠くの銀河から光の赤方偏位が大きいという観測」を、宇宙空間が膨張してきている証拠としてだけとらえているが──　　この『EMOES宇宙論』の場合は、“宇宙空間が膨張してきている証拠”としてだけでなく、“遠い銀河ほど、物質がコンパクト化の進行が激しかったことの証拠”としてもとらえることができる。

　※ ビッグバウンス直後の、 「物質の分散がmaxで、物質周囲の宇宙空間の縮小がmax（＝物質の凝縮が最小で物質周囲の宇宙空間の膨張が最小）」という状態は──　その後の、“空間を膨張させることのできる宇宙”が存在するため（ハッブルの法則が成立するため）の“初期条件”であるという見方ができる。

　この初期条件がととのった後──　 物質が再凝縮するとともに、その周囲の宇宙空間が再膨張すると考えられる。

　正しければ、“インフレーション”と呼ばれている現象の実体は、指数関数的な“物質の分散”（物質の材料の分散）＆“周囲の宇宙空間の収縮”であり、そこにあるのは、いわゆる“宇宙空間の膨張”とは180度逆であるということになる。
　つまり、“インフレーション”とは、正確には、“宇宙空間のインフレーション”ではなく、“物質の分布の広がり（分散）による、宇宙のインフレーション”であるということになる。　　詳細な検討は、今後の課題である。

　♯「“重力子の相互キャンセル”により原始ヒッグス場ユニットの“4面体”比率がmaxになる」しくみは、次の左側の図のような簡単なモデルで説明できる。

→ 質量の コンパクト化

※左がビッグバウンス直後の状態を説明している。 　重力子が互いにぶつかり合う場所で、“4角形”（縮みきったバネ）が、一時的にキャンセルされて、“4面体”となる。 　なお、ここにある“4角形”（縮みきったバネ）のキャンセルとは、あくまで、一時的な見かけ上のキャンセルであり、重力子が完全に消滅するという意味ではない。　すなわち、そのキャンセルの後は、重力子が互いに何事もなかったように“素通り”した後と同じ状態となる。 　ビッグバウンスから時間が経過して、“物体（質量）の、自身の重力によるコンパクト化”、すなわち、“物質の再コンパクト化が進めば進むほど──　 重力子による原始ヒッグス場ユニット（PHU）の“4角形”（縮みきったバネ）のキャンセルによって生じていた“4面体”が減り、逆に原始ヒッグス場の“4角形”（縮みきったバネ）は増加すると同時に、“物体（質量）の密度が減る。

　以上の“EMOES”（素スピノールからの創発モデル）の説明は、ビッグバンそれ自体が、“宇宙の膨張をもたらした”とは考えられないことを意味している。
　そのことは、下記の記述と調和している。

　このように、“銀河同士は実際には遠ざかっておらず、空間自体が膨張している”の中の“空間自体が膨張している”という現象は、ビッグバンそれ自体によって、宇宙全体が膨張していることによって生じているのではなく、ブラックホールの中で、“物質の（再）凝縮によって、その周囲の宇宙空間が（再）膨張している”ことによって生じていると考えるとつじつまが合うと思われる。

　“EMOES”（素スピノールからの創発モデル）によれば、“ビッグバンのエネルギーの源”は、プレオン∴ヒッグス場ユニットの“4角形”（縮みきったバネ）から解放されたエネルギーである。
　このビッグバンのエネルギーは、高温状態（高エネルギー状態）を生む。
　この高温状態（高エネルギー状態）が、“少なくとも3世代までクォークやレプトンが生成”するために必要不可欠である。　つまり、物質が優位である、この世界を作るために、ビッグバンが必須であったことになる。　（結果5）
　そしいう意味では、もしかしたら、“膨張”を連想させてしまう“ビッグバン”より──　 元々の命名である、“ファイヤーボール”が、ふさわしい呼び方であると言えるのかもしれない。



《平坦な宇宙、閉じた宇宙、開いた宇宙》

　ブラックホールの中であれば、“閉じた宇宙”ということであり、現在観測されるところの“平坦な宇宙”と矛盾するように見える。
　しかし、「ブラックホールの中と言う“閉じた宇宙”になる効果」と、「時空が膨張し続けている（物質が再凝縮（再コンパクト化）し続けている）という“開いた宇宙”の効果」が、うまい具合に重ね合わさることによって、現在観測されるところの“平坦な宇宙”（厳密には加速膨張しているところの宇宙）が生じていると考えることができるのではないだろうか？

　正しければ、「平坦な宇宙、閉じた宇宙、開いた宇宙」は、“三者択一”の問題ではないことになる。　もしかしたら、この考え方によって、微妙な値にコントロールされている宇宙定数を説明できるのかもしれない。
　詳細な検討は、今後の課題である。



《外から見たブラックホールと内側から見たブラックホール》

　EMOES宇宙論によると、ビッグバウンス〜インフレーションの過程は、物質が分散すると同時に、宇宙（時空）がコンパクト化する過程（“重力子の相互すり抜け合い（干渉）”によって見かけ上、重力子＆“4角形”（縮みきったバネ）が低密度化する過程）である。
　（そのことは、その後、宇宙が（再）膨張できるようになるための初期条件（余地）を獲得する過程であると考えられることは上でも述べた）

　その後の、物質が凝縮し、星、銀河…　ができる過程は──　 物質が再コンパクト化する過程であると同時に、宇宙空間が再膨張する過程に相当することになる。
　（宇宙空間が再膨張する過程とは、「重力子＆“4角形”（縮みきったバネ）」が再高密度化する過程にほかならない。　現在も、進行し続けており、それは、なおかつ加速している）

　「重力子＆“4角形”（縮みきったバネ）」の密度の再増加＝宇宙空間の再膨張　であるので──
　「重力子＆“4角形”（縮みきったバネ）」の密度の高さ”＝“宇宙空間の広さ”を意味していると考えられる。

　よって、ブラックホールの中には、本来、重力子が最高密度で存在していると言えるので──
　たとえ、外から見たブラックホールのサイズは小さくコンパクトに見えても、中から見たブラックホールのサイズは、ほとんど無限に大きく見えるということが起こりうると考えられる。　（相対性理論とも合致する。　結果1）

　つまり、この「たとえ外からは有限に見えても、内側からは無限に宇宙空間が広がっているように感じられる」という性質をブラックホールが持つので──　ブラックホールの中で、新しい「宇宙」が育まれることも十分に可能になると考えられる。



《Cosmological Natural Selection〈宇宙論的自然選択〉と
　　　　　　　　　Ecological Natural Selection〈生態学的自然選択〉》

　「より多くのブラックホールを生み出しやすい物理定数を持つ宇宙が、結果的に、より大多数を占めるようになるだろう」というCosmological Natural Selection〈宇宙論的自然選択〉の枠組みの中の考え方を、3Steps理論的に解釈すれば、
　重力場による凝縮と、ビッグバウンスによる分散を土台とする

　のようなサイクルを繰り返しやすい宇宙が、結果的に、より大多数を占めるようになるだろう”ということになると考えられる。

　よって、次の仮説を立てた。

　仮説C2.2　次のようなサイクルが、よりよくまわり続ける”とき、“より多くの物質、より多くのブラックホールをターンオーバーしやすく”なっており、そのような宇宙（＝ブラックホール）の存在比率が高まってくる。　この過程が、Cosmological Natural Selection〈宇宙論的自然選択〉である。

　この宇宙論的な自然選択──「多様な物質の生成レベル〜核子やレプトンの生成レベル〜時空の基本構造の社会レベル」の繰り返しやすさの獲得により、“物理的なパラメーター”（物理法則…）が絞り込まれてくると考えられる。
　すなわち、このターンオーバーを繰り返すことが最も効率よく達成されている状況では──　 “星の生成＆消滅”のサイクルも繰り返しやすいだろうし（その結果、炭素や酸素…、鉄を含む、様々な、より大きな原子が生成し、再利用されうる）、各種の力（強い力、弱い力、重力…）の程度も最適化されると考えられる。


　※厳密に見れば、 Ecological Natural Selection〈生態学的自然選択〉とCosmological Natural Selection〈宇宙論的自然選択〉は、完全な相似の関係にはないようである。

　しかし、一方で、「生態系の社会レベル〜生態系レベル〜」の3Steps（≒生態学的な自然選択）により、あらゆるレベルの“ライフの世界”が絞り込まれうることや、例えば、特定の種（例えば、人間社会）が、生態系や生態系の社会のあり方を絞り込みうること等、Ecological Natural Selection〈生態学的自然選択〉とCosmological Natural Selection〈宇宙論的自然選択〉は似ている所があると思われる。


　※「事象地平線という境界」を提供してくれるブラックホールの中でこそ──　　ある特定の物理定数を持つ宇宙が誕生できると考えるとつじつまが合うと思われる。　（参考『宇宙は自ら進化した　ダーウィンから量子重力理論へ』　リー・スモーリン著）




《“ターンオーバー”と“ブラックホール＆宇宙”の進化》

　「われわれが、最もブラックホールを生み出しうる宇宙にいる理由が全くない──」
　「もし、われわれが、ブラックホールを最も生み出しやすい宇宙にすんでいるのなら、この宇宙空間には、もっともっと満ちあふれていて、とっくに我々は、ブラックホールに飲み込まれているはずだ──」
　　…
　という批判がある。

　しかし、それは、「より多くのブラックホールを生み出しやすい物理定数を持つ宇宙」という定義が不十分であり、誤解を招いているからすぎないと思われる。

　そういった誤解を予防すると思われる補足された定義は、
　「より多くの宇宙を、ターンオーバーを通じて再生産しやすい（物理定数を持つ）宇宙」というものである。

　アンダーライン部分──ターンオーバーを通じてというのが大きなポイントである。
　ターンオーバーを通じては、『「（凝縮した）物質を材料にして、重力によって新たなブラックホールを作り、その中でバウンスし、インフレーション（“物質の分散”＆宇宙空間の収縮）＆ビッグバン（ファイヤーボール化）が起こり、（分散した）物質が優位になり、（宇宙空間が再膨張できる）新たな宇宙が生まれて、その後、（宇宙空間が再膨張しながら）その物質が再び凝集して、星、銀河ができて…　再び新しいブラックホールができて…」という過程を通じて』という意味を持つ。
　「新しいブラックホールの形成＆ビッグバウンス」という過程は、ターンオーバーを通じて、新たな宇宙を再生産する際の重要な過程なのである。


※もし、ターンオーバーがなければ──　どうなるか？
　まず、【生態系レベル】を例にして、考える。
　たとえば、過去に、絶対にターンオーバーせずに再生産し続ける“種＆ローカル生態系”が登場したとする。　例えば、その種は、どんどん増えつづける一方で──　安定的に多数派を占め続けることになるだろう。
　しかし、その結果、多様な種も、人類も進化して来ることはなかったであろう。
　同様に、いったん「ターンオーバーを介さずに、より多くのブラックールを再生産しやすい宇宙」登場したらどうなるか？　やはり、新たな宇宙が進化してくる余地がなくなるのである。　その、ターンオーバーしないブラックホールという名の宇宙が再生産され続け、多くを占め続けるだけである。　現在、われわれが暮らす、この絶妙な物理定数を持つ宇宙が登場することもなかったはずである。
　（まさに、上記の2番目の批判「もし、われわれが、ブラックホールを最も生み出しやすい宇宙に住んでいるのなら、この宇宙空間には、もっともっと満ちあふれていて、とっくに我々は、ブラックホールに飲み込まれているはずだ──」のような状況が実現してしまい、“宇宙の進化”どころではなくなっていたはずである）



　この“宇宙におけるターンオーバーの繰り返し”の過程の本質は、「物質の圧縮過程←→物質の分散」の過程の繰り返しである。

　そして、この“物質の圧縮過程＆物質の分散過程”を内在する“ターンオーバーの繰り返し”の中でこそ、 「より多くの宇宙を、ターンオーバーを通じて再生産しやすい（物理定数を持つ）宇宙」が進化してくると考えられるのである。

　そして、このターンオーバーの原動力は、重力にほかならない。
　“変化しない重力（重力定数）”という土台の上で、ほかの力が、コツコツと進化してきたと考えられるのである。
　　（→下記説明）

　ここまでの説明が正しければ、重力以外の3つ力の進化こそが、 「より多くの宇宙をターンオーバーを通じて再生産しやすい（物理定数を持つ）宇宙」への進化と同一のものであったことになる。


　※重力以外の3つの力とは、電磁気力、弱い力、強い力である。
　　現在のこれらの力の性質が、「より多くの宇宙を、ターンオーバーを通じて再生産しやすい（物理定数を持つ）宇宙」として、本当にふさわしいかどうかについての詳細な検討は、今後の課題である。

　※なお、L_P光子を介する原始的な力も、重力とともに、早くから存在していたと考えられる。
　　詳細な検討は、今後の課題である。



《: : と ∴ の存在比率の書き換えと宇宙の進化および力の創発》

　新しいブラックホール由来の“ビッグバウンス”が、新たな宇宙の誕生に相当するのなら、この宇宙は、決して、“完全な無”から生まれたわけでもないし、“量子ゆらぎ”から生まれたわけでもないことにもなる。
　そして、なおかつ、もし、“すべてがリセットされてしまう”前に、その臨界点に到達できるとすれば、“過去の情報”の一部を保持できることになる。　そして、宇宙は、歴史を持つことになる。
　すなわち、宇宙は、“本当の意味で”進化できることになる。　
　（“本当の意味で”とは、「個体の発達」と類推できるような、これまでの宇宙の進化ではなく──　「遺伝子の書き換えをともなったダーウィンの進化」と類推できるような、宇宙の進化という意味である）

　その“過去の情報”の一部とはなんであろうか？
　当然、ヒッグス場ユニット由来の“4角形”（縮みきったバネ）、プレオン∴ヒッグス場ユニット由来の“4角形”（縮みきったバネ）も、“過去の情報”の一例であろう。
　そして、さらには、“過去の情報”の一例として、“: :と∴の比率”を考えることができる。
　“: :と∴の比率”が変化すると、物理定数が変化すると考えられる。（下記説明）
　つまり、正しければ、EMOES宇宙論1で説明したような、ブラックホールが新しく作られてから、ビッグバウンスするまで過程の中のどこかで、この物理定数の変化が起こるかもしれないということになる。


　この“EMOES”（素スピノールからの創発モデル）のアプローチでは──
　宇宙の始まる直前において、フェルミオンであるプレオン∴は、「プレオン∴×4の4角形（縮みきったバネ）」の形をとり、（同一の物理状態で同位置を占められる）ボソンになることによって、“フェルミ圧”を消失させていると考える。
　（それは、高密度に圧縮され、体積が極めて小さい宇宙の始まりの直前にふさわしい状態だと思われる）

　そして、このアプローチでは、宇宙が始まってから存在する、ほとんどのプレオン∴は、この「プレオン∴×4の4角形（縮みきったバネ）」由来で作られ、存在するようになったと考えられる。

　しかし、一方で、単純な算数で、「“∴×4 ＋:×2＝　: :×4”」や「∴×4＝: :×3 」が成り立つので──　「: :×4←→∴×4＋:×2 」や「∴×4←→:×6←→: :×3 」といった形の変化も、きわめて特殊な条件の下で、少数ではあるが、起こりうるのではないかと考えてみた。　（前者は、: :から、1つの・を取り除けば、∴になることを利用しており、「素粒子の3つの世代の生成する過程」と相似である。　後者は、「プレオン∴×3のクォーク＆レプトンから、プレオン∴×4の“4角形”を生じる過程」と相似である。）

　つまり、（新しいブラックホールの形成の過程などの）“超高密度＆高圧の極限状態”で、原始ヒッグス場ユニットのごく一部が、「: :×4←→∴×4＋:×2 」や「∴×4←→:×6←→: :×3 」の過程により、“: :と∴の比率”を変化させることが考えられる。

　そのことを、次のような仮説としてまとめてみる。

　　仮説C2.2　素スピノール×4の“4角形”: :”と“プレオン∴”は、「新しいブラックホールができた直後」や「宇宙がはじまる直前」などの超高密度＆高圧の極限状態でのみ、「: :×4　←→　∴×4＋:×2: :」や「∴×4←→:×6←→: :×3 」のような形で互いに変換しうる。

　そして、さらに、以下の仮説を立てた。

　　仮説C2.3　“: :と∴の比率”が、宇宙の物理定数（パラメーター）を決める。


　これらの仮説が正しければ、宇宙が始まる際などに確立された、この“: :と∴の比率”が、その後宇宙の状態、ふるまい、変化、素粒子の特性…　の性質を決定づけることになる。　また、“: :と∴の比率”を変えるのは、極限状態限定であるという理由によって、いったんでき上がった宇宙の中では、物理定数は一定で変わらないことになる。

　また、正しければ、この超高密度＆高圧の極限状態を経ることによって──　 宇宙（時空）は、その物理の法則（物理定数（パラメーター））を、わずかに書き換えることが可能であることになる。



　“: :と∴の比率”の変化は、実際に、各種の力について、具体的に、どのような変化を与えうるだろうか？

《重力》
　∴は、質量、すなわち、「重力子の放出源として働く能力」を担うものである。
　: :は、原始ヒッグス場抵抗を担うものである。

　よって、「∴　>　: :」であるほど、重力は強くなり、「∴　<　: :」ほど、重力は弱くなると考えられる。

　例えば、重力子質量M_G［kg］を持つ物体は、厚さ2L_P［m］の球殻に、常に1つだけ「重力子＆“4角形”（縮みきったバネ）」を存在させるような、重力子の放出頻度を持つのであり、それは、一定であるのであった。
　それと対照的に、原始ヒッグス場抵抗を担う、: :は、変化することになる。
　よって、質量を担う∴の総和が一定のままなら──　 : :が増えれば、それだけ抵抗が増えるので重力は小さくなり、逆に: :が減れば、それだけ抵抗が減るので重力は強くなるであろう。

　※ver1.04までで、「“: :と∴の比率”の変化は、重力定数を変化させない」（重力の大きさは不変である）と考えたことは間違いであったことになる。

《電磁気力》
　∴は、電荷、すなわち、「仮想光子の放出源として働く能力」を担うものでもある。
　: :は、原始ヒッグス場抵抗を担うものである。

　よって、「∴　>　: :」であるほど、電磁気力は強くなり、「∴　<　: :」ほど、電磁気力は弱くなると考えられる。

　例えば、当量電荷Q_E［C］を持つ物体は、「厚さ2Lの球殻に、一秒間にc/2Lp個の“4面体”の変形をもたらすような電荷である」と定義されたものであり、仮想光子の放出頻度は一定である。
　それと対照的に、原始ヒッグス場抵抗を担う、: :の数は変化することになる。
　よって、例えば、電荷を担う“∴”の総和が一定のままなら──　 “: :”が相対的に増えれば、重力場において、“4面体”のバネが相対的に増えるので、その結果、電磁場を作る「仮想光子の放出頻度」が増え、電磁気力は強くなる。


　※つまり、“: :と∴の比率”の変化は、結果的に、重力場の強さ、電磁気力の強さに変化を与えることになると考えられる。


《原始的な力》
　∴は、L_P色荷、すなわち、「L_P光子の放出源として働く能力」を担うものでもある。
　: :は、原始ヒッグス場ユニットの“4面体”を担うものである。

　よって、「∴　>　: :」であるほど、重力は強くなると同時に、“4面体”の比率が低下するので「L_P光子の放出頻度」も低下するであろう。　一方、「∴　<　: :」ほど、重力は弱くなると同時に、“4面体”の比率が上昇するので、「L_P光子の放出頻度」も上昇すると考えられる。

　つまり、「∴　>　: :」であるほど、（L_P光子を介する）原始的な力は弱くなり、「∴　<　: :」であるほど、（L_P光子を介する）原始的な力は強くなる。

　よって、“: :と∴の比率”の変化は、結果的に「L_P光子の放出頻度」にも影響するので、プレオンどうしを結びつける“原始的な力”の強さを変えると考えられる。


《強い力（強い相互作用）》
　∴の総和は、グルーオン色荷、すなわち、「グルーオンの放出源として働く能力」、および、「プレオン∴ヒッグス場ユニット」（プレオン∴×4）を担うものでもある。
　: :は、原始ヒッグス場ユニットの“4面体”を担うものである。

　グルーオンやクォーク、「プレオン∴ヒッグス場ユニット」は、すべて∴できているので、強い力（強い相互作用）は、“: :と∴の比率”の変化の影響を受けないように見える。

　しかし、「∴　>　: :」であるほど、「L_P光子の放出頻度」が低下するので、グルーオンの放出頻度が減り、「∴　<　: :」ほど、「L_P光子の放出頻度」が上昇するので、グルーオンの放出頻度が増えるという影響を生じると考えられる。

　つまり、「∴　>　: :」であるほど、（グルーオンを介する）強い力は弱くなり、「∴　<　: :」であるほど、（グルーオンを介する）強い力は強くなる。

　よって、“: :と∴の比率”の変化は、結果的に、「グルーオンの放出頻度」にも影響するので、プレオンどうしを結びつける“強い力の強さ”を変えると考えられる。

　※このことは、当然、中間子を介する中間子力（核力）にも影響すると考えられる。


《弱い力（弱い相互作用）》
　∴の総和は、クェークやレプトン、および、「L_P光子の放出源として働く能力」を担うものでもある。
　: :は、原始ヒッグス場ユニットの“4面体”を担うものである。

　「∴　>　: :」であるほど、「L_P光子の放出頻度」が低下するので、ウィークボソンの放出頻度が減り、「∴　<　: :」ほど、「L_P光子の放出頻度」が上昇するので、ウィークボソンの放出頻度が増えるという影響を生じると考えられる。

　つまり、「∴　>　: :」であるほど、（ウィークボソンを介する）弱い力（弱い相互作用）は弱くなり、「∴　<　: :」であるほど、（ウィークボソンを介する）弱い力（弱い相互作用）は強くなる。

　よって、“: :と∴の比率”の変化は、結果的に、「ウィークボソンの放出頻度」にも影響するので、弱い力（弱い相互作用）の大きさを変えると考えられる。

　※“CP対称性の破れ”は、弱い力を介して達成されるので──　 「∴と: :の比率」の変化は、間接的には“CP対称性の破れ”の程度にも影響を与えうると考えられる。



　各種の力について、次のように整理することができる。

　重力が変化するということは、「“重力定数G”の実質的な意味」がそれぞれの時空ごとに変化しうることを意味する。
　本当だろうか？
　重力定数は、G＝2πc³L_p²/h　で表記できるのであった。（結果1）
　（さらに、ここに、h＝2πTpEp、c＝Lp/Tpを代入すると──　　G＝3L_p⁵/Tp⁴Ep　となる）
　よって、もし、「光速cも、プランク時間Tpも、プランク距離Lpも、プランクエネルギーhも、一定であれば、重力定数Gも一定である」と言うこともできると思われる。

　たしかに、プランク距離LpやプランクエネルギーEpは、各時空で一定であると考えられる。
　しかし、光速cや、プランク時間Tpの実質的な意味は、各時空で変化するようである。

　なぜなら、プラング時間Tpの定義は、「波長2L_Pの光子や重力子を構成する素スピノールが180度、共転回する時間」であり、特殊相対性理論により、それぞれの時空ごとに変化しうるからである。　すなわち、プラング時間は、それぞれの時空における“時間の流れ”を決める時計のようなものであり、その時計の進み方は、それぞれの時空で変化するからである。
　光速も、実質的な意味は、それぞれの時空で変化しうる。　だからこそ、観測者の運動状態に応じた、それぞれの時空で、「光速はcだ」を観測するのである。（結果1）

　よって、もし、それぞれの時空をまたいで比較できれば、重力定数の実質的な意味が変化していることを観測できるはずである。
　しかし、“それぞれの時空をまたいで”比較することは、実際できない。　したがって、それぞれの時空の中で、それぞれの重力定数を決めるしかなく、この変化を観測することができなくなってしまう。　すなわち、それぞれの時空で「光速はcだ」を観測するように、それぞれの時空で「重力定数は、Gだ」を観測するだけの結果となるのである。


※このことが、「ウラシマ効果」の実現を支える仕組みでもある。
　なぜなら、各種の力は、すべて、素スピノールの転回に依存しており、力が働くスピード（≒力の大きさ）は、すべて、同時に変化するからである。
　すなわち、「重力子＆“4角形”（縮みきったバネ）」の密度が変化すれば、時間の流れが変化し、すべての力の働くスピードが変化するからこそ、「ウラシマ効果」が実現するのである。

（なお、双子のパラドックスは、“加速の有無”だけで説明するのは、不十分であると思われる。
　なぜなら、原始ヒッグス場に対して、光速近くの高速度で等速直線運動する方が、（原始ヒッグス場に対して、低速で運動しているより）明らかに、ただそれだけで時間の流れが遅いからである。　詳細な検討は、今後の課題である）




　“EMOES”（素スピノールからの創発モデル）によれば、宇宙は、“: :と∴の比率”の変化を変化させながら、進化してきたと考えられる。

　: : と∴ の存在比率を変化させながら（大多数の: : の中で∴の数を増やしながら ）──

　「重力＆原始的な力だけを持つ宇宙」→「重力＆原始的な力と、電磁気力だけを持つ宇宙」→「重力＆原始的な力、電磁気力、弱い力だけを持つ宇宙」→「重力＆原始的な力、電磁気力、弱い力、強い力を持つ宇宙」→　…

　という具合に進化してきたと予想される。
　（「個体発生は、系統発生を繰り返す」から類推して予想している。詳細な検討は、今後の課題である）
　（参考── 進化の流れ（一般3Steps進化論）


　おそらく、重力や原始的な力のみ存在するような超初期の宇宙では、 : :が、ほとんどをしめていた。
　 : : がほとんどを占めている宇宙とはどんな宇宙であろうか？
　: :は、重力場の材料そのものである。
　つまり、: : の密度が高ければ高いほど、強力な重力場──ブラックホールの形成効率が上がり、より巨大なブラックホールが形成されやすくなっていたと考えられる。

　※「 : : がほとんどを占めている宇宙」とは、“ブラックホールの内部環境に似たもの”が1つに融合してしまっているような、たった1つの宇宙ということになるかもしれない。　あるいは、それは、「より多くのブラックホールを生み出しやすい物理定数を持つ宇宙」という不十分な定義を忠実に実現したところの宇宙に似たものに相当するかもしれない。　詳細な検討は今後の課題である。


　その後、より「: : <∴」となるように変化すればするほど、重力は、強くなってきた。（のちは、電磁気力も同様に強くなってきた）

　徐々に∴の比率が増し続ける中で──
　（逆に）より「: :>∴」のときの方が、より強くなる力、すなわち、原始的な力、弱い力（弱い相互作用）、強い力（強い相互作用）、核力（中間子力）も育ってきた。

※: :と∴ それぞれを構成する素スピノールの総数の合計は、常に一定となる。

　すなわち、: :が多すぎたり、∴が多すぎたりする宇宙ではなく、 “: : と∴ の存在比率”がちょうどよい宇宙が、“最も宇宙を、ターンオーバーを伴って再生産しやすいような物理定数を持つ宇宙”であると考えられるのである。

　それは、「∴と: :──　　すなわち、フェルミオンとボソン──　 あるいは、“物質と宇宙空間”──　 がちょうどよいバランスを保っているところに、宇宙の“ターンオーバーを伴った再生産の頻度”のピークがある」と言うこともできると思われる。



　以上より、「ほとんど : : だけで構成された、重力や原始的な力、および、ある物理定数を持つ宇宙」から、「現在のような“: : と∴ の存在比率”で構成された、各種の力（重力、電磁気力、強い力＆核力、原始的な力＆弱い力）、および物理定数を持つ宇宙」への進化が進んできたのは、この宇宙の方が「より多くの宇宙を、ターンオーバーを通じて再生産しやすい（物理定数を持つ）宇宙」に近いからであると、説明できることになる。


　やはり、“ターンオーバーを伴った再生産”が、カギなのである。
　決して、“ブラックホールのサイズが最大になること”や“微小な（再生産できない）ブラックホール）を多数生じることができること”のように「単にブラックホールができやすくなること」が、他の力を持つ宇宙への進化を促したのではなく──　 “宇宙が、ターンオーバー（＝物質の圧縮過程＆バウンス）をともないながら、効率的に再生産（reproduction）できるようになること”こそが、「本当の意味での“宇宙の進化”」を促してきたと考えられるのである。

　そして、こういった「本当の意味での“宇宙の進化”」の過程こそ、Cosmological Natural Selection〈宇宙論的自然選択〉と呼べる過程なのである。



　確かに、ほとんど、: : だけしか存在しない宇宙、（重力や原始的な力のみを持つ宇宙）のままであれば──　 素粒子も、原子も、星も、銀河も何もほとんど形成されることはないので、宇宙を、ターンオーバーを伴って再生産することが達成しにくくなるであろう。

　一方──　 “∴（プレオン）がほとんどを占めるようになり、: : がわずかしかなくなった宇宙”であれば、3つの力（原始的な力、強い力、弱い力）が非常に弱くなり、（逆に）電磁気力が非常に強くなってしまうので（原子核を作る際、斥力を生んでしまうので）、素粒子、原子、星、銀河…　を生じることが困難になり、宇宙を、ターンオーバーを伴って再生産することが達成しにくくなってしまうであろう。

　やはり、各種の力（電磁気力、原始的な力、強い力、弱い力）が、現在のこの宇宙が持つ程度の大きさであるような宇宙であれば、素粒子、原子、星、銀河…　を生じることができるので、より効率的＆スピーディーに、宇宙を、ターンオーバーを伴って再生産することが達成しやすくなるであろう。

　以上より、次の予測を立てることができる。

　予測C1.0　Cosmological Natural Selection〈宇宙論的自然選択〉の歴史の結果として──　 われわれは、「最も、宇宙を“ターンオーバーを伴って再生産しやすい”ような物理定数を持つ宇宙に、ほとんど等しい宇宙」に住んでいる。


　※「より多くのブラックホールを生み出しやすい物理定数を持つ宇宙」という定義を──　 もう一度、より正確に表現し直せば、「“より宇宙を、（ターンオーバーを伴って）再生産しやすいような物理定数を持つ宇宙」ということになるだろう。



　そして、今、われわれが暮らす、この宇宙（物質＆宇宙空間）が、その“ピーク”近くに相当する可能性は、決して、0ではないはずであり── 　むしろ、その可能性の方が高いと考えられるのである。

※: :と∴ それぞれを構成する素スピノールの総数の合計は、常に一定となる。 ※左下の紫色で囲った部分は、「最もブラックホールを生み出しにくい宇宙」や「ブラックホールを最小化する宇宙」が該当すると考えられる。

　確かに、われわれが、「ブラックホールを最も生み出しやすい宇宙」あるいは、「ブラックホールを最大化する宇宙」に暮らしている理由は、理論上も観測上もない。　しかし、“最も効率的にターンオーバーを通じて宇宙を再生産しやすい宇宙（宇宙の“ターンオーバーを伴った再生産”の頻度が最大の宇宙）”にいる理由は、理論上も観測上も十分ありうるのであり──　 多いに検証していく価値があると考えられるのである。


　さらに、Smolin氏によれば、炭素（C）の比率が高いほど、（COなどの炭素の所産が、熱を効率的に逃がしてくれるので）ブラックホールが、よりできやすくなると考えることができるとのことである。

　さらに、また、付録その他1素スピノールのネットワークのフラクタルについて　の中の「“4面体”のフラクタル（×3）」によれば、「炭素Cと、原始ヒッグス場の“4面体”が、フラクタル的な、きってもきれない関係を持っているらしい」ということがある。



　つまり、以上のような、宇宙の自然現象という土壌の上で──　 生命にとって、ありえないほど絶妙な、物理定数〈パラメーター〉の数々が、生命の有無に関係なく自然に育まれてきたのだと考えることも、十分可能だと考えられるのである。

　このような考え方が可能であることを知るとき──
　 “人間原理”を考える前に（考えるよりも優先的に）、検討すべきこと＆できることが、まだまだたくさんあることに気づかされる。

　（※なお、Cosmological Natural Selection〈宇宙論的自然選択〉は、人間原理に対する科学的な代替案として提案されている。
　　『Scientific alternatives to the anthropic principle』　Lee Smolin）


　生命、そして、人間（知性を持つ観測者）が存在しようがしまいが関係なく──　 現在のような“4つの力、現在の標準模型のパラメーター（物理定数）を持つ宇宙”にまで、（本当の意味で）進化してきた可能性があるのである。
　　（参考　一般3Steps進化論）


　“EMOES”（素スピノールからの創発モデル）は、スモーリンのCosmological Natural Selection〈宇宙論的自然選択〉を支持していることになっている。

　これが、EMOES宇宙論である。



　※「新しいブラックホールの形成というゴール」＝「新しい宇宙のスタート」において、“: :と∴の比率”という過去の情報の一部が保持される。　（また、当然、ヒッグス場由来の“4角形”（縮みきったバネ）、プレオン∴由来の“4角形”（縮みきったバネ）も、“過去の情報”の例であろう）
　そして、ブラックホールが新しく作られてから、ビッグバウンスするまで過程の中のどこかで、その“超高密度＆高圧の極限状態”を経ることによって、その“: :と∴の比率”という情報の一部は失われ（書き換えられ）、そのことが、各種の物理定数（各種の力の大きさ）が変化として現れると考えられる。
　（その過程は、生物における、（遺伝子の書き換えをともなって）進化する過程と相似である）

※厳密な数式化による説明は、どのようになるであろうか。
　詳細な検討は、今後の課題である。