3ステップスにおいて、ショートカット現象やディートゥア（遠回り）現象は、現実的に多々見受けられます。

ショートカット現象の例

　例えば、“建物の1階から2階へ移動する（階段を上る…）”という行動（or動作）について見てみます。

　ようやく歩けるようになった小さな子どもが初めて階段を登る時は、おそらく一段一段は、人生レベルの“3ステップス”がくるくるまわっています。そして、だんだん慣れるにつれて、ほぼ反射的に自動的に階段を上れるようになります。その“慣れ”に伴って現れる“人生レベル→細胞の社会レベル（神経回路レベル）”という変化が“ショートカット現象”の一例です。

　このような成長や成熟、慣れに関連したショートカット現象が生じる例は、立位を保つこと、歩行、ランニング、さまざまな日常動作（歯磨き、手洗い、料理…）、スポーツ（水泳、ボールを投げる、蹴る…）、自転車・自動車の運転、言葉の獲得、書字、ワープロの入力、楽器の演奏、リンゴの皮むき、投票行動、購買行動 、通勤通学のルート選択、数の計算（足し算、九九…）、思考の単純化（“これこれこういう理由＆理屈でこうなる。”→“これはこうだ。”）、意識してやっていた情動・感情のコントロールが自然に自動的にできるようになる…　と多々ありえます。
　そこにあるのは、“繰り返し”“反復練習”によって、“神経回路が覚えている”状態（＝体が覚えている状態）に至る変化です。（それは、小脳や大脳基底核も大きく関わっていると考えられます。なお、複雑な“飛行運動”をする鳥類も小脳や大脳基底核が大きいです）


　“建物の1階から2階へ移動する（階段を上る…）”に戻ります。

　さらに、今まで身体の働き（慣れ）で2階へ移動していたところに、エスカレーターが登場したとします。エスカレーターによってほぼ何もしないで2階へ移動できる状態、それは、言い換えれば、“電気の力”（外部の物理的な力）によって、重力に逆らった身体がただ2階へ移動しているということです。その“機械化”に伴って現れる、“細胞の社会レベル（神経回路レベル）→物質レベル（多様な物質の生成レベル）”という変化もショートカット現象の一例です。

　このようなショートカット現象の例は、機械化されたもの（エレベーター、リフト、電車・バス、コンピュータ…）の利用の他にも、物理的な自然災害（地震、津波、火山噴火、雷、台風、竜巻、太陽風、隕石の衝突、太陽からの日射量の変動、気候変動や大陸の移動等の地球環境の変動…）の影響等々、多々ありえます。
　そして、そこに現れているのは、“細胞の社会レベル（神経回路レベル）or人生レベル→物質レベル（多様な物質の生成レベル）”というタイプのショートカット現象です。


ディートゥア（遠回り）の例

　再び、“建物の１階から２階へ移動する（階段を上る…）”という行動・動作を例にして見てみます。

　例えば、いつも通い慣れたルートでエスカレーターがあって、これまで、何も考えずに、エスカレーターの利用を選択していた人が、ある時、“足腰を鍛えるために階段を利用しよう”と決断し、となりの階段を利用する行動を選択するようになった場合、そこにある“細胞の社会レベル（神経回路レベル）→人生レベル”という変化が、ディートゥア（遠回り）現象の一例です。

　同様に、例えば、これまで、何も考えずに階段を選択していた人が、膝を少し痛めてしまい、“となりのエスカレーターを利用しよう”と決めて、となりのエスカレーターを利用することを選択するようになった場合、そこにある“細胞の社会レベル（神経回路レベル）→人生レベル”という変化も、ディートゥア（遠回り）現象です。

　同様に、これまでは、何も意識せずに、階段で2階に上るという“動作”を達成していた人が、膝を少し痛めてしまい、（階段しか選択肢がなくて）一段一段、慎重に膝への負担をできるだけ軽くなるように上るような場合、そこにある階段を登る動作における“細胞の社会レベル（神経回路レベル）→人生レベル”という変化も、ディートゥア（遠回り）現象です。


　例えば、もし、エスカレーターが点検中で（or 節電するために停止していて）、「階段をご利用ください」というお知らせが張ってあり、それを見て、階段を利用するようにった場合、そこにある階段を上るという行動に至るまでの“細胞の社会レベル（神経回路レベル）→人間社会レベル”という変化も、ディートゥア（遠回り）現象です。

　同様に、例えば、もし、あるエスカレーターの混雑がひどくて、約束の時間に間に合わないという状況の中で階段を利用するようにった場合、そこにある階段を上るという行動に至るまでの“細胞の社会レベル（神経回路レベル）→人間社会レベル”という変化も、ディートゥア（遠回り）現象です。



　ディートゥア（遠回り）現象の例は、他にも、いろいろあります。
　例えば、それまで人間社会への貢献だけを目的としていた企業活動が、生態系への影響も考慮しながら決断し、実際に保全する形で活動するようになった場合、そこにあるのは、“人間社会レベル→生態系レベル”というディートゥア（遠回り）現象です。

　シートベルト着用義務の法律などの新しいルールができた場合、そこにあるのは、“細胞の社会レベル（神経回路レベル）or人生レベル→人間社会レベル”というディートゥア（遠回り）現象です。

　それまで何も考えないで当たり前のことだと思い込んでいたことについて哲学する（深く考える）場合 or それまでの何気ない習慣を努力して変えようと努力する場合 or それまでに自然に身に付いていた情動反応や感情を意志の力でコントロールしようとする場合、そこにあるのは“細胞の社会レベル（神経回路レベル）→人生レベル”というディートゥア（遠回り）現象です。

　それまで自力でやってきていたのを誰かの応援・助言にも支えられるようになる or 誰かと協力してやるようになった場合、“人生レベル→人間社会レベル”というディートゥア（遠回り）現象です。

　それまで、自種の都合だけを優先し、他種を身勝手に利用（or排除）する一方だけで生存してきたある種が、農業や牧畜、植林…　を始めることで他種と協力して生存するようになった場合 or 腸内細菌等と積極的に共存しようとする場合、種レベル→生態系レベルというディートゥア（遠回り）現象です。

　…


　以上のように、3ステップスに関して、現実的に、ショートカット現象もディートゥア（遠回り）現象の例が多々挙げられます。