意を決して、昼寝しているおじいさんに再びアクセスし、話しかけてみることにした。
「──おじいちゃん？」
「──」　何の反応もなかった。

「──おじいちゃん、そろそろ起きていただけませんか？」
「──」　やはり、何の反応もなかった。

「──おじいちゃん！？」　声を大きくしてみた。
「──」　うんともすんとも言わないおじいさん。見ると、お腹の上下運動が、はっきり認められないことに気付いた。
「おじいちゃん！？」　思わず駆け寄ると、僕は、おじいさんの体をゆり動かした。
「──。　──あ？」　おじいさんは、ゆっくり目を開けた。

「ふうー。驚かさないでくれよ」と僕。
「──ん？　なんじゃ？」
「あれ、す、すみませんが──　そこを、ど、移動していただけないでしょうか？　──お願いします」　僕は、思わず両手を合わせた。
「あっ？　──イヤじゃ」　おじいちゃんはあっさり断った。
「な──」

　どれくらいの時間が経ったのだろう？
　もうどうしようもないとあきらめかけた頃、おじいさんは、ふと身をおこし始め、そのままゆっくりと立ち上がったんだ。
　　──ん！？　　思わず身構える僕。
　しかし、そんな僕を気にも留めずに──
「ああ、よく寝た。はらも減ったし。アッハッハッ！」　おじいさんは、そのまま歩き去った。