家々が下を流れている──。
「す、すごいよ！　空を飛べるなんて！」
「ありがとうございますですぅ〜♪」　そう返事をしたコンパースは、今度は、空高く舞い上がり始めた。上へ、上へ──　家々や道路や森や川が、見る見る遠ざかっていくのがわかった。

　しばらくすると、スピードが緩み、静止した。

　そこは、地元全体をゆうに一望できるほどの上空だった。
　その海岸線の形は、地図で見ていたものとほとんど同じだった。
　前方を見やると──　水平線が、これまで見てきたものとは比較にならないほど、はっきり丸みを帯びていた。太陽の光があたっている海面は、表現できない美しさでキラキラ輝いていて──。

「行ってみたい場所は、ございませんでしょうか〜？♪」
「え？　そうだなあ──。 ──とりあえず、あの岬？」
「はい、かしこまりましたでございますぅ〜♪」　コンパースは、そう言うと、スムーズな滑空を始めた。
　心地よい風が全身をなでていく──。
「ああ、気持ちいいや！」

　岬へと向かうあの上り坂の上空を悠々と飛び越え──
「ヤッホー！　ラクチン、ラクチン！」
　そして、例の下り勾配にさしかかる頃、そのポイントを見やると、“キラリ” が目に入った。
「あっ、おじいちゃんだ！　また、あそこで寝てらあ。これじゃ、朝寝だよ。
　──お〜い！！」　僕は、お腹の底から声を張り上げてみた。

　そうして、僕たちがその“キラリ”の上空にたどり着こうとする、まさにその瞬間、 僕の目は大きく見開いた。
「え！？」
　その“キラリ”の正体は、朝の陽光が反射して輝く──
　　──宝箱！？