まもなく夏が終わり、それから秋が過ぎ、さらに冬が過ぎると、雪解けの季節になった。

　春の陽射しが、冬の間に野原に降り積もった雪を片隅においやり、オオイヌノフグリが可憐に咲き始めていた。
　新鮮な雪解け水によって、小川の勢いがいくらか増していた。
　花の咲き始めた木の枝では、小鳥たちが明るい歌を奏で始めていた。
　…

　ところが、そのような季節に、地図の裏に書き入れていた文字やコンパスの針の絵は、いつの間にか、すっかり消えてしまっていたんだ。

　コンパースと話をすることも全くできなくなっていた。
　　──ああ、あいつとあいさつできなかったなあ。
　　なんだかさびしいや。
　鉛筆を取った僕は、再び『カラダ　アタマ　カタチ　コトバ』を書き込もうとした。
　 ──が、やめた。
　　これは、きっと、2番目の新しいパラダイムをおじいちゃん
　に教えてもらうべきだってことなのだろう。
　そう思ったからだ。
　それに、僕が見つけたプチ・マップの作り方をおじいさんに披露して、彼をアッと驚かせたかったし──
　 結局、僕は決めたんだ。
　　──おじいちゃんに、また会いに行こう。