一息ついてから、その成果の披露を始めた。
　まず、おじいさんにもらった図の説明から──。

「この図形はコッホ曲線と呼ばれているんだ。これはフラクタルの一種で、フラクタルとは“自己相似性”を持つ存在のことさ」と僕。
「──自己、ソウジセイ？」と彼女。
「そう。自己、相似性」
「──自分で自分を、きれいに掃除する性質？」
「その掃除でなくて、“相互に、サイズを超えて似ている”という意味の相似さ。
　つまり、自己における、内側の部分と外側の全体が、お互いに、サイズを超えて似ているという性質が自己相似性なんだよ」
「──ヘエー」
「この“自己相似性”を持っている例は、自然界に、いっぱいあるんだよ。例えば、雲のモクモク、海岸線のギザギザ、山のデコボコ、川や樹木の枝分かれ、雪の結晶──。どれも、自己における、内側の部分と外側の全体が、相似になっているのさ。
　例えば、コッホ曲線を３つ組み合わせてできるコッホ雪片も、どことなく本物の雪の結晶っぽいっしょ？」

「本当だ。不思議──」
「これが本物の雪の結晶っぽいのは、自然界にある本物の雪の結晶が“自己相似性”を持っているからこそなんだ」
「へえー」
「この自己相似性は、コッホ曲線の作り方を見れば、より理解しやすくなるはずだよ」
　僕はメモ用紙を広げて、ペンを持った。「まず、１本の線があるとする（A）。次に、その線を３等分し、その真ん中の線分だけを２本にして最終的にトンガリ山を作る（B）」

「あっ！　第７フレームと似ているね？」
「そうそう。そうなんだ。
　それで、コッホ曲線を作るためには、この作業をずうーっと繰り返せばいいんだよ」
「ずうーっと？」
「そう。ずうーっと──

　──ほら！　ここまで来ると、おじいちゃんに、もらった図と同じになる」
「あっ、本当だ！」