「“生態系”レベルの3つのステップの意味についても、4番目から6番目のパラダイムを考え合わせると、もっと、わかりやすくなるはずだよ」と僕。



「──。 ええ、よくわかる気がする──。
　やっぱり、それぞれのステップの意味も人間社会レベルと相似になっているんでしょ？」と彼女。
「そう、まさに、その通り！
　だから、例えば最初のステップは──　まさに、人間社会レベルにローカルなものとグローバルなものの両方があるのと同じように、生態系レベルにもローカルなものとグローバルなものの両方があることを意味しているんだよ」
「アハッ♪　やっぱり──」
「この『In　Out』は、関わり合う個体社会が、どれだけ広く分布しているかってこと、いわば、分散度を示しているんだ」
「あ！　そうすると──　例えば、人間社会という個体社会は、南の果てから北の果てまで生息地を拡大しながら、ほかのさまざまな個体社会と広く関わっているから、どちらかといったら『Out』の方向にいるのね？」
「そうだね。
　さらには、生息地の広がりに限らず、例えば、人間社会が排出する二酸化炭素の影響が地球全体に及ぶという意味でも、人間社会は『Out』の方向にいると思うよ」
「──そうすると、生息地が限られている植物が放出する酸素の影響も地球全体におよぶから、その意味では植物も『Out』の方向にいるのね？」
「そうさ。だからこそ、“地球上のすべての生き物や地球環境を含む、まるごと全体が1つの生態系である”という見方も成り立つんだよ。まあ、それがグローバル生態系ってやつだね」
「グローバル生態系──。じゃあ、その逆がローカル生態系なのね？」
「そうさ。僕と果物との関係、僕とランプベリーとの関係、僕とお腹の中の細菌との関係… これらの関係は、ローカル生態系の例だと思うよ」
「アハッ♪　──よくわかるわ」
「うん。それで、次の2つ目のステップは──　ある個体社会が、さまざまなほかの個体社会から恵みや脅威を受けるってこと。具体的には──
　“植物が繁栄し、二酸化炭素を吸収して酸素を作り出してくれるおかげで”とか、
　“果実が実って食糧を供給してくれるおかげで”とか、
　“大昔の生き物たちが繁栄して、石油や石炭などの化石燃料を生んでくれたおかげで”とか…　の恵みを受けたり──

　 一方で

　“人間社会が過剰に二酸化炭素を放出してしまうせいで”とか
　“果実があまり実らず食糧を十分に供給できないせいで”とか、
　“大昔の生き物たちがあまり繁栄せず、石油や石炭などの化石燃料を少量しか生まなかったせいで”とか…　の脅威を受けたりするってこと」
「──うん。すると、もちろん──　恵みが『For』の方向なら、脅威は『Against』の方向なのね？」
「その通りさ。
　例えば、人間社会の集合としての種、人類は、ほかの、さまざまな個体社会の集合としての種から、これまで実に多くの恵みを受けた。
　食糧、燃料だけでなく、空気や土壌、海… も含めて実にさまざま──」
「ええ、そうね」
「でも、一方で、人間社会の集合としての種、人類は、ほかの、さまざまな個体社会の集合としての種に対して、これまで実に多くの脅威を与えた」
「え？」
「例えば、乱獲、樹木の伐採し過ぎ、急激な気候変動、環境汚染… は、人類による、ほかの種に対する脅威に相当するんだよ」
「・・・　──そうね。“かわいたちくん”たちにとって、乱獲や河川環境の悪化… は、まさに私たち人類による脅威だったのね」　彼女は、悲しげにそう言った。
「ああ」
「──だから、3つ目のステップは、恵みや脅威を受けたほかの種が“繁栄するか衰退するか”“存続するか絶滅するか”… のような『On　Off』で示される内容を持っているのね？」
「そうだね。もちろん、それは、いずれ“人類自身がどうなるか”ってことでもある」
「──え？」